The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Digital Oral

術後遠隔期・合併症・発達

デジタルオーラルII(P35)
術後遠隔期・合併症・発達 4

指定討論者:深江 宏治(熊本市立熊本市民病院)
指定討論者:川﨑 志保理(順天堂大学心臓血管外科)

[P35-5] フォンタン術後患者における入院時蛋白漏出性胃腸症治療の実際

宍戸 亜由美, 大内 秀雄, 吉田 礼, 伊藤 裕貴, 藤本 一途, 岩朝 徹, 坂口 平馬, 津田 悦子, 白石 公, 黒嵜 健一 (国立循環器病研究センター)

Keywords:Fontan術後, 蛋白漏出性胃腸症, PLE入院治療

<背景>蛋白漏出性胃腸症(PLE: protein losing enteropathy)はFontan手術後の主な合併症の1つで、その寛解率は低く、入退院を繰り返す。しかし、Fontan手術後PLE治療の標準化はされていないのが現状である。 <目的>当院でのFontan手術後PLE患者の臨床像、治療の実際とその経過について検討する。<方法>当院で2019年2月までに施行したFontan手術500例中38例(7.6%)でPLEを発症していた。2012年から2020年に当院に入院し治療が行われたPLE患者22例を対象とし、その臨床像、治療の現状を後方視的に検討した。<結果>診断は単心室5例、三尖弁閉鎖3例、その他14例で、左室体心室6例、非左心室16例であった。入院時年齢は15±8歳でPLE発症から9±6年経過していた。PLE治療としてヘパリン持続静注、利尿剤内服・持続静注、アルブミン静注、γグロブリン持続静注・皮下注が施行された。各々延べ18例(82%), 11例(50%), 5例(23%), 9例(41%), 6例(27%), 1例(5%)に施行され、4治療併用が6例(27.2%)、3治療併用が1例(4.5%)、2治療併用が6例(27.2%)で単剤治療が9例(40.9%)であった。入院期間は平均27日で、治療前後(平均値)で, 体重(kg)は37.1から36.2(p = 0.01)と低下し、血清の総蛋白(g/dL)と血清アルブミン(g/dL)は 各々4.8から5.9、3.0から3.9へ上昇していた(両者p<0.0001)。平均1.8±2.3年で17例(77%)が再入院し、4例(18%)は死亡していた。この17例は再入院しなかった5例と比べ低年齢で術後PLE発症までの期間が短く、入院時の浮腫が高頻度で、肝酵素(AST)と白血球数が高く、低ナトリウム血症を示し、180日以内の早期再入院10例(46%)では入院時コリンエステラーゼとHDLコレステロールが低かった(p<0.05)。<結論>PLE治療には約1か月の入院を要し、多様な治療が施行されたが、その約8割が再入院し、その多くは半年以内再入院で、全体の死亡率も高かった。今後のPLE治療向上に向けたより一層の取り組みが必要である。