[P37-5] 右上大静脈(RSVC)左房還流、PLSVCに対し、RSVC単純結紮を行った一例
Keywords:anomalous systemic venous drainage, 片頭痛, 右上大静脈左房還流
【背景】右上大静脈(RSVC)左房還流は極めて稀な疾患であり、小児期および成人期両方での報告が散見される。成人期で診断される症例はしばしばQOL低下を伴う慢性的な症状を認める。【症例】55歳女性、前医で慢性低酸素血症(SpO2 88%)および慢性片頭痛の精査が行われ、RSVC左房還流、左SVC遺残と診断された。Headache Impact Test-6のスコア65と重度の片頭痛、易疲労感、運動時失神の既往があり手術適応と判断され当科紹介となった。心房中隔欠損はなく、また無名静脈は痕跡的であった。手術は両側内頸静脈に圧モニター用カテーテルを留置し、SVC再建に備えてECMOスタンバイとした。胸骨頭側逆L字切開アプローチにて心膜外経路でSVCを露出し、奇静脈と左房合流部の間でSVCをクランプしたところ、RSVC圧はクランプ前後で5mmHgから12mmHgまでの上昇にとどまった。このためRSVC再建は行わずRSVC単純結紮のみ施行した。術後RSVC圧は緩やかに低下し、術翌日には7mmHg程度であったため中心静脈カテーテルは抜去した。術後一過性に右上肢に軽度浮腫を認めたが速やかに改善した。退院前の造影C TではRSVCは血栓閉塞していた。現在外来通院中であるが、内服薬はなく、また術後から片頭痛は一度も起こっていない。【結論】1.無名静脈のない両側大静脈に対し、圧モニター下にRSVC単純結紮が可能であった。2.右左シャントが片頭痛の一因となるという説を支持する知見を得た。3.原因不明の低酸素血症を認めた場合は大静脈左房還流を考慮にいれるべきである。