第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

成人先天性心疾患

デジタルオーラルII(P37)
成人先天性心疾患 2

指定討論者:山村 健一郎(九州大学病院)
指定討論者:市川 肇(国立循環器病研究センター 小児循環器内科)

[P37-6] 成人先天性心疾患患者の妊娠 リスク分類から見直そう,妊娠前リスクを知るアプローチ

竹蓋 清高, 籏 義仁, 中川 良, 佐藤 有美, 植田 由依, 中西 敏雄, 先崎 秀明 (国際医療福祉大学成田病院 小児科)

キーワード:成人先天性心疾患, 妊娠, 心機能

【背景】成人先天性心疾患の妊娠・出産にあたっては,基礎疾患のリスク分類から重症度評価を行い,妊娠前のカウンセリングの時点で避妊や中絶を選択することも多い.しかし実際には厳格な管理を行うことで妊娠や出産をできる症例も存在する.心臓カテーテル検査及び心肺運動負荷試験(CPX)にて妊娠前の評価を行った女性を報告する.
【症例】30歳,9歳時に感染性心内膜炎を発症し,僧帽弁置換(Carbo-Medius 25mm)が行われ,現在は抗血栓療法および抗凝固療法を受けている.挙児希望があり,妊娠のリスクを評価するために血液検査,心電図をはじめとして,心臓カテーテル検査(安静およびドブタミン負荷),心肺運動負荷試験を施行した.
【結果】BNP 42.7pg/mL,心電図は洞調律で心房細動を認めない.心臓カテーテル検査にて,心拍数(HR) 60回/分,心拍出係数(CI) 4.6L/min/m2,左室収縮圧 110mmHg,左室拡張末期圧(LVEDP) 12mmHg,肺動脈圧(PAP) 24/13(18)mmHg,肺動脈楔入圧(PCW) 14mmHg,僧帽弁の弁口面積は2.7cm2であった.ドブタミン5γを負荷したあとでは,HR 85回/分,CIは6.4L/min/m2に上昇し,PAP 28/18(24)mmHg,PCW 18mmHg,左室収縮圧 115mmHg,LVEDP 15mmHg であった.ニトロール冠注を行いながら冠動脈造影を行った後,スワンガンツカテーテルを右肺動脈に留置した状態でCPXを施行した.開始前はHR 90回/分,血圧 119/78mmHg,CPW 8mmHgであったが,運動のピーク時にはHR 163回/分,血圧 180/77mmHg,PCW 27mmHgまで上昇した.
【考察】機械弁であることから周産期の抗凝固療法によるリスクは高いと考えられるが,心機能及び循環動態の観点からの妊娠は可能と判断した.現在,CARPREG IIやZAHARAスコアなどを用いた妊娠前のリスク判定が行われているが,妊娠前に運動負荷を行い妊娠のリスクを予測する報告は少ない.今後症例を蓄積することで安全に妊娠,出産できるより正確な指標を提示できる可能性がある.