[P39-1] バオバブの木の様な造影所見を呈した毛細血管拡張型肺動静脈奇形の12歳男児例
Keywords:肺動静脈奇形, 毛細血管拡張型, 遺伝性出血性末梢血管拡張症
【背景】肺動静脈奇形(以下PAVM)は先天的な血管形成異常による肺毛細血管を介さず肺動脈から肺静脈への短絡が形成される疾患である.形態的に径1~5cm程度の多発あるいは単発の嚢状を呈するが,毛細血管拡張型は稀である.【目的】バオバブの木の様な造影所見を呈した一肺区域全領域に及ぶ毛細血管拡張型PAVMの1例を経験したので報告する.【症例】12歳男児.家族歴に遺伝性出血性末梢血管拡張症なし.既往歴に鼻出血なし.合唱中に息がしづらくなったため近医を受診し初めて低酸素血症を指摘された.前医での諸検査でPAVMを疑われ当院に転院した.入院時,酸素飽和度89%,皮膚・口腔内に異常所見なし,手指のばち状の変形は軽度,Hb 17.5g/dL,BNP 5.8pg/mL, 胸部レントゲン検査・胸腹部エコー検査で明らかな異常なし,胸部CT検査で右S3領域全体に肺動静脈の拡張あり,99mTc-MAA肺血流シンチで異常血管相当部分の肺血流低下,シャント率29%,心臓カテーテル検査で肺高血圧なし,右左短絡率30%,SaO2 90%,肺動脈造影で右S3領域全体に静脈相の早期の出現と末梢肺動静脈の拡張を確認した(造影像はバオバブの木を想起させた).頭部MRIで特に異常なし.右S3に限局した毛細血管拡張型PAVMと診断し,胸腔鏡下に肺区域切除を施行した.【考察】PAVMの治療は,近年,侵襲性の低い経皮的カテーテルによる塞栓術が普及しているが,適応には限界もある.本例は無数の微小病変が主体のPAVMで,一肺区域全体が異常血管の塊のような所見を呈し,複数科との協議を経て塞栓術は困難と判断し,病変が限局していたため肺区域切除術を選択した.【結語】PAVMにおいては個数,部位,流入動脈の数・径などを詳細に把握し,関連各科と連携し総合的に治療戦略を計画することが重要である.