第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

デジタルオーラルII(P39)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患 1

指定討論者:加藤 太一(名古屋大学)
指定討論者:岩朝 徹(国立循環器病研究センター 小児循環器内科)

[P39-4] 剖検から肺静脈低形成と診断された肺静脈閉塞性肺高血圧のダウン症候群

石橋 信弘, 石橋 洋子, 桑原 義典, 本村 秀樹 (国立病院機構 長崎医療センター 小児科)

キーワード:肺静脈低形成, 肺高血圧, ダウン症候群

【はじめに】ダウン症候群では、高肺血流時の肺動脈性肺高血圧の進行はよく知られている病態である。一方で、肺静脈狭窄(PVS)など肺静脈が原因である肺高血圧の報告も最近増えている。今回、臨床経過から肺静脈閉塞性疾患に伴う肺高血圧症と診断し、剖検から肺静脈の低形成が確認できたダウン症候群を経験したので文献的考察を加えて報告する。【症例】30週2日、820gで出生した女児。NICUに入院し、染色体検査でダウン症候群と診断した。出生後早期の肺高血圧は生理的範囲内で、ASD(5mm)以外に心内奇形は認めなかった。生後2か月から咽頭喉頭軟化症のためHFNC装着を開始した。生後3か月から超音波検査で右室負荷を伴う著明な肺高血圧所見が出現した。この時点での胸部造影CTでは、4本の肺静脈の左房への還流が確認でき、明らかな狭窄起点は認めなかった。シルデナフィル、ボセンタンを投与したが肺高血圧は進行し、呼吸状態が悪化したのでエポプロステノールを開始したが肺水腫を発症した。PVSや肺静脈閉塞症(PVOD)、肺静脈低形成など肺静脈異常に起因する肺高血圧症と臨床経過から判断した。気管切開や利尿剤など内科的管理で一時小康状態となり退院した。1歳5か月時に感染を契機に全身状態が悪化し、永眠された。剖検の肉眼所見では、4本の肺静脈は全体的に細く、部分的な血管内腔の狭小化というよりは肺静脈全体の低形成であった。【考察】本例のように肺静脈低形成に伴う肺高血圧は成長とともに血液循環量が増えることで症状が顕在化することも考えられる。特にダウン症候群で報告が散見される、通常の肺高血圧と異なる経過をとる場合や肺血管拡張療法で肺水腫となる場合には、考慮すべき病態である。ダウン症候群の肺高血圧ではその成因について検討する必要がある。