The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

Digital Oral

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

デジタルオーラルII(P40)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患 2

指定討論者:土井 拓(天理よろづ相談所病院)
指定討論者:中山 智孝(高知赤十字病院)

[P40-6] 肺血管拡張薬は両方向性Glenn循環において体肺側副血行を増加させている可能性がある

岩屋 悠生1, 石川 友一1, 倉岡 彩子1, 兒玉 祥彦1, 漢 伸彦2, 中村 真1, 佐川 浩一1 (1.福岡市立こども病院 循環器科, 2.福岡市立こども病院 胎児循環器科)

Keywords:Glenn循環, 体肺側副血行路, 肺血管拡張薬

【緒言】両方向性Glenn(BDG)循環では体肺側副血流(SPCF)は大動脈血流の37%、肺静脈還流の54%を占めるとされる。肺血管拡張薬(PVD)は肺血管床発育を期待されBDG循環に用いられるが、血行動態への影響は不明である。
【目的】PVDがSPCF流量に及ぼす影響を明らかにする。
【対象と方法】2015年11月から2021年2月までに当院でBDG循環時に心臓MRI(CMR)を2回施行した例を対象とし、SPCF流量の変化をPVD内服群(P群n=7)と非内服群(N群n=15)で比較した。SPCF流量は2通りの方法で計測した(SPCF1=大動脈血流量-(上大静脈+下大静脈血流量)、SPCF2=左右肺静脈血流量-左右肺動脈血流量)。SPCF1/2それぞれが大動脈血流(Ao)とQpに占める割合を算出・比較した。
【結果】CMR施行間隔はP群10.2ヶ月N群9.3ヶ月で差はなかった。SPCF1/2の増減量はP群+0.49(1.50→2.00)/+0.63(1.30→1.93) vs N群-0.03(1.49→1.46)/+0.02(1.20→1.22) L/min/m2(p=0.17/0.05)、Ao流量に占めるSPCF1/2の変化はP群+9.6(29.3→38.9)/+12.9(25.1→38.0) vs N群-0.6(32.6→32.1)/+0.3(27.2→27.5) %(p=0.11/0.007)、Qpに占めるSPCF1/2の変化はP群+10.5(44.7→55.2)/+16.2(37.9→54.2) vs N群-0.9(47.2→46.2)/+0.4(39.2→39.6)%(p=0.17/0.01)とSPCF2は有意にP群で増大した。Qp/QsはP群+0.24(0.95→1.18) vs N群+0.01(1.03→1.03) (p=0.03)とP群で有意に増大した。初回CMR時点のPAIはP群137 vs N群206(p=0.23)と有意差はなかった。
【考察】本検討からPVDがSPCF流量を増大させる可能性が高いと考えられた。これはFontan術後症例でも同様で、PVD内服例では定期的にSPCF流量を測定するべきであろう。ただし有意差こそなかったが、PVDは肺血管床の乏しい症例に用いられる傾向が強く、肺血管床が乏しいことがSPCF流量を増大させる因子である可能性もある。
【結論】BDG循環においてPVDはSPCF流量を増大させる可能性が高く留意する必要がある。