[P41-2] 肺動静脈瘻を合併した門脈体循環シャントに対しシャント絞扼術を行った生後3ヶ月の多脾症候群の1例
Keywords:肝肺症候群, 門脈肺高血圧症, ハイブリッド手術
【背景】先天性門脈体循環シャント(CPSS)は肺動静脈瘻(PAVF)を合併することが知られている.門脈低形成を伴う場合の治療方針決定においては閉塞試験での門脈圧の上昇の程度が問題となるが,低月齢児に治療介入を要した症例の報告は乏しい.【症例】生後3ヶ月男児.出生後に単心房,右室低形成,下大静脈欠損,CPSSと診断された.心疾患治療目的に生後1ヶ月で当院へ転院したが,心不全症状が軽度であり外科的介入は行わず退院指導のため自宅周辺の周産期センターへ転院した.しかしその後原因不明のSpO2が出現し生後3ヶ月で当院へ再転院となった.【検査】SpO2は室内気で70%台まで低下していた.心臓カテーテル検査では平均肺動脈圧は9mmHgと低値であり,RPV・LPVのSO2はそれぞれ88.7%・71.4%と低下を認めた.計算上のQp/Qsは0.52, RpIは0.60 Wood・U/m2であった.肺動脈からのコントラストエコーが陽性となり,PAVFと診断した.造影ではごく細い門脈が造影され,シャント血管の閉塞試験では門脈圧は9mmHgから20mmHgに上昇した.【治療】生後3ヶ月の児において20mmHgの門脈圧が許容可能か否かの判断は難しく,一期的なシャント閉鎖ではなく開腹での絞扼術を選択した.手術はシャント血管を介して留置したカテーテルで門脈圧を実測しながら行った.術後の門脈圧は14mmHgに上昇した.【術後経過】術後より徐々にSpO2は上昇し室内気で80%台を維持可能となった.消化吸収の異常や血中肝胆道系酵素の上昇は認められず,術後25日で退院した.3ヶ月後の心臓カテーテル検査では平均肺動脈圧は26mmHgに,Qp/Qsは1.31, RpIは2.69 Wood・U/m2であった.RPV・LPVのSO2はそれぞれ96.6%・82.7%へ改善していた.また上部消化管内視鏡では食道静脈瘤は認められなかった.【結語】低月齢の児における門脈圧の耐容上限に関する文献は乏しい.今後の更なる症例の蓄積が待たれる.