The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Digital Oral

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

デジタルオーラルII(P41)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患 3

指定討論者:松裏 裕行(東邦大学医療センター大森病院小児科)
指定討論者:澤田 博文(三重大学医学部)

[P41-3] 当科で経験した小児悪性腫瘍治療後の肺動脈性肺高血圧症2症例

藤井 隆, 粟野 裕貴, 高橋 辰徳, 安孫子 雅之 (山形大学医学部 小児科)

Keywords:肺高血圧症, 悪性腫瘍, 化学療法

【はじめに】小児悪性腫瘍治療後の合併症として,アントラサイクリン系をはじめとする各種の抗がん剤や放射線照射による心筋障害が広く知られている一方で,肺高血圧症の報告は稀である.【症例1】2歳女児.1歳5か月時に神経芽腫Stage 4と診断され,2歳3か月で自己末梢血幹細胞移植を施行された.移植66日後に脳転移巣からの出血で入院した際,胸部X線写真で心拡大を認め,左室圧とほぼ等圧の肺高血圧症を発症していた.マシテンタン,セレキシパグ,リオシグアトを導入し,発症から9か月でPAP 68/22/(45)→17/6/(9) mmHg,Rp 7.9 → 0.6 Wood U・m2まで改善した.【症例2】2歳女児,trisomy 21, VSD(peri), ASD(II)に対し4か月時にICRを施行した.人工換気下で術前の左右心室はほぼ等圧,Qp/Qs 2.2, Rp 6.1 Wood・U/m2であった.1歳10か月時にAMLと診断された.治療導入前の心エコーでは心室中隔形態は正常であったが,治療終了後には中隔の扁平化を認めた.心臓カテーテル検査ではPAP 46/22/(35) mmHg, Rp 4.1 Wood U・m2と軽度の肺高血圧を呈していたが,右室壁運動が良好であったため肺血管拡張薬の導入は行わず経過観察を行い,半年後にはエコー上の中隔形態は正常化した.【考察】抗悪性腫瘍薬の中には薬剤性肺高血圧を来すものや,肺高血圧との関連が示唆されるものがある.症例1のような造血幹細胞移植後の肺高血圧は,移植関連血栓性微小血管症と同様の機序によって起きる肺血管の内皮細胞障害が原因と考えられている.症例2では,染色体異常や左右シャント疾患の既往といった背景に加え,治療に伴う水分負荷による肺動脈の壁ストレスも発症に影響した可能性が考えられる.【結語】小児悪性腫瘍患者の治療合併症として肺高血圧が起こり得ることを認識し,併存症や既往歴などからリスクが高いと考えられる症例に対しては,より注意して診療にあたるべきだと考えられる.