[P42-5] 患者由来iPS細胞を用いたHOIL-1L欠損症における拡張型心筋症発症のメカニズム解明
Keywords:心筋症, iPS細胞, 基礎研究
【背景】近年、HOIL-1L欠損症が拡張型心筋症発症の原因となるという報告がされている。HOIL-1Lは生体内においてLUBAC(Linear ubiquitin chain assembly complex)と呼ばれる複合体の一部として主にNF-κB活性化に関わり、免疫応答や炎症に関わることが示唆されている。そのため、HOIL-1L異常症においては免疫不全様の症状や自己炎症疾患様の症状が臨床的にみられるが、それと同時にほとんどの症例で心筋症・ミオパチーを発症しており、そのうち心筋症は致命的な表現型となる。現在、我々は患者由来のiPS細胞を用いたその機序解明を進めており、2020年の小児循環器学会での発表に続き、研究の進行報告と今後の展望について述べる。【目的】患者由来のiPS細胞を用い、HOIL-1L異常症の心筋における心筋症発症のメカニズムを解明すること。【方法】骨格筋モデルとしてマウス筋芽細胞を使用し、CRISPR-Cas9システムによりHOIL-1Lノックアウト(KO)株を作成し、RNA seqによる網羅的解析を行った。また、患者iPS細胞を心筋へ分化させ、心筋症発症メカニズムを解明する。【結果】マウス筋芽細胞のHOIL-1L KO株において、筋管への分化異常を認めた。また、RNA seqでは筋分化に関わるgene setの変動を認めた。一方、患者iPS心筋においても心筋細胞の形態異常を疑う所見を認めた(2020年小児循環器学会で報告)。また、マウス筋芽細胞のRNA seqと患者iPS心筋において線維化に関わるとされるSerpinE2の発現上昇を認めた。さらに、マウス筋芽細胞のRNA seqにおいてHOIL-1L KO株における細胞周期の異常が示唆され、患者iPS心筋においても解析中である。【考察と今後の展望】HOIL-1L異常症において、心筋の分化過程の異常と繊維化の亢進が心筋症発症の一因となっている可能性がある。