[P42-6] ラット摘出灌流心において膜透過処理により誘発した死戦期カルシウム波の解析及び収縮帯形成との関連についての検討
Keywords:Calcium dynamics, Calcium wave, contraction band
【背景】心臓は個々の心筋細胞が調和し興奮・収縮してポンプ機能を発揮する機能的合胞体であり,その要となる分子はCa2+である. 心筋Ca2+動態の異常は心臓の病態を反映する重要な現象である. このうち局所の高Ca2+領域が細胞内を波状伝播するCa2+ waveは,Ca2+蛍光指示薬と高速共焦点レーザー顕微鏡を用いることで可視化でき,その特徴から3種類に分類される. このうち死戦期の心臓にみられると考えられるagonal waveの発生機構や特性は十分にはわかっていない. また,agonal waveが収縮帯壊死をもたらす不可逆的なCa2+動態異常であると推測されるが,関連は不明である.【目的】ラット摘出灌流心で細胞膜傷害モデルを作成し,心筋の不可逆的傷害に伴う細胞内Ca2+動態異常,細胞形態との関連を明らかにする.【方法】ラット摘出灌流心にFluo4/AMを負荷した後,界面活性剤の灌流による膜透過処理を行い,spinning disc typeの高速共焦点レーザー顕微鏡で,心外膜側心筋細胞のCa2+ imagingを行った(100 frame/s, 503×338μm). 形態の評価はCa2+観察後の心臓を2%PFAで化学固定した後,免疫組織化学を行い,共焦点レーザー顕微鏡で行った.【結果】膜透過処理により多発性のagonal Ca2+ waveを誘発した. Ca2+ waveの頻度はすぐにピークを示し,伝播速度は経時的に増加した. 10分以内にCa2+ waveは消失し,収縮帯が形成された. 免疫組織化学では,収縮帯に一致してアクチンの過収縮を認め,アクチニン構造は崩壊していた. 同じ実験条件でミオシンII阻害薬(2,3-butanedione monoxime(BDM))を追加した心臓では,同様のCa2+動態を認めたものの,収縮帯の形成は抑制され,sarcomere構造は保持されていた.【考察】agonal waveの特性と経時的変化について定量評価した. 形態学的評価では収縮帯でのアクチンの過収縮を含むsarcomere構造の変化を見出した. BDM併用で収縮帯形成が抑制されたことから,収縮帯形成には機械的収縮が必要であることを示した.