[P44-3] 川崎病心血管後遺症による成人期血栓性動脈瘤の1例からXa阻害薬による抗血栓療法の可能性を検証する
キーワード:川崎病, 動脈瘤, 第Xa因子
【背景】川崎病心血管後遺症に対する至適抗血栓療法の確立は、成人期長期管理において取り組むべき重要な課題である。巨大冠動脈瘤または血栓症の既往がある場合、抗血小板療法に加えてワルファリンの使用がクラスIで推奨されているが、エビデンスレベルはCと低い。また、ワルファリンによる抗凝固療法には、1.安定した治療域の維持、2.出血性合併症、3.動脈石灰化などへの懸念がある。これらのワルファリンの問題点を改善しうるXa阻害薬に代表されるDOACは、主に心房細動患者において、より安全性・有効性の高い抗血栓療法として広く世界に普及しており、川崎病に対する臨床応用が期待されている。そこで我々は、川崎病心血管後遺症による成人期血栓性動脈瘤の1例から、Xa阻害薬による抗血栓療法の可能性を病理学的に検証した。【症例】症例は、川崎病罹患後左上腕動脈に巨大動脈瘤が残存している30代の男性。巨大上腕動脈瘤による急性血栓性閉塞にて、当院へ救急搬送された。緊急経皮的血管形成術にて再灌流後、血栓イベント予防のため抗血小板療薬に加えてワルファリンを開始した。しかしながら、血栓イベントが再発したため、動脈瘤に対する人工血管置換術を施行し、切除摘出した血栓性動脈瘤を病理学的に検討した。動脈瘤内には、CD68陽性のマクロファージ集簇をともなう著明な血栓形成を認め、血栓は深部の器質化血栓と浅部の比較的新鮮な血栓による層状構造を呈していた。免疫組織化学染色にて、比較的新鮮な血栓部に集簇する好中球に第Xa因子が強く発現していることが判明した。【結語】第Xa因子は、好中球に発現するprotease-activated receptor 2を介して、血管炎症に関与することが報告されている。本研究結果は、第Xa因子が直接的だけでなく、炎症による間接的な凝固系の活性化を介して血栓形成に関与する可能性を示唆しており、Xa阻害薬による抗血栓療法に関する今後の臨床試験が待たれる。