[P44-8] 著明な心機能低下を呈した川崎病ショック症候群の1例
キーワード:川崎病ショック症候群, 不全型川崎病, 心筋炎
【背景】川崎病ショック症候群(Kawasaki disease shock syndrome:KDSS)は、低血圧あるいは循環不全を合併した川崎病と定義され、治療抵抗例が多く、冠動脈異常を呈するリスクが高いと報告されている。今回、我々は、急性期に著明な心機能低下をきたしたKDSSの1例を経験したので報告する。【症例】症例は、生来健康な7歳男児。発熱、咳嗽、四肢と体幹部の皮疹を認め、前医ではマイコプラズマ肺炎の診断で抗菌薬、プレドニン投与での加療を開始された。その後、眼球結膜充血、硬性浮腫を認めたが解熱なく、7病日に心拡大 (心胸郭比56%) と全身状態の悪化をきたし当院紹介となった。入院直後の心エコー図検査で著明な心収縮能の低下 (EF 42%) と中等症の僧帽弁閉鎖不全を認め、血圧は67/45mmHgとショックであった。心筋逸脱酵素の上昇や心電図変化は乏しかったが、白血球数 22,900 /uL、CRP 27.7mg/dL、NTpro-BNP 61,856pg/mLと異常高値を呈し、アドレナリン持続静注を含む強力な抗心不全療法を要した。不全型の川崎病に伴う川崎病ショック症候群と診断し、入院同日より、ガンマグロブリン療法(IVIG 2g/kg/day)による治療を開始した。初回IVIG終了時に解熱ないため、すみやかに追加治療としてIVIG再投与とメチルプレドニゾロンパルス療法(IVMP)の併用療法を行った。9病日に解熱し、心機能も緩徐に改善を認め、11病日に正常化した。12病日に四肢の膜様落屑を認め川崎病の経過として矛盾なかった。経過中, 冠動脈病変や不整脈は認めていない。【結語】KDSSの1例を経験した。本症例では2回のIVIGとIVMPの併用療法により、冠動脈病変を呈することなく経過した。KDSSについては、いまだ不明な点も多く、症例の蓄積が今後の川崎病の病態解明や効果的な治療法の選択肢につながるものと考えられる。