第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

川崎病・冠動脈・血管

デジタルオーラルII(P45)
川崎病・冠動脈・血管 3

指定討論者:梶野 浩樹(JA北海道厚生連 網走厚生病院)
指定討論者:星野 真介(滋賀医科大学)

[P45-4] 小児期に外科的治療を行った2例を含む冠動静脈瘻の報告

原田 真菜, 磯 武史, 若月 寿子, 田中 登, 松井 こと子, 古川 岳志, 福永 英生, 秋元 かつみ, 高橋 健, 稀代 雅彦, 清水 俊明 (順天堂大学 小児科)

キーワード:冠動静脈瘻, 冠動脈瘤, カテーテル治療

【背景】冠動静脈瘻(CAF)は、冠動脈が近接する心血管腔に異常に還流する疾患であり、短絡量が多い場合は治療適応となる。大きな瘤がある場合は血栓を生じる可能性があり、抗血栓法が必要とされているが、その適応や方法については症例毎に異なる。【方法】当院において、過去20年間(2000~2020年)にCAFと診断された9症例の臨床経過、病型と治療介入の有無、Qp/Qs、抗血栓療法について調査した。【結果】診断時年齢は1か月~6歳(平均1.5歳)、観察期間が1年6か月~11年(平均4年間)。9症例中6症例が無治療で、そのうちカテーテル検査が施行された2症例のQp/Qsは1.0, 1.1であった。治療介入した3症例のうち、遠位型(流出部RCA-流入部RA)の1症例では、冠動脈拡張が進行し8mm台となったため、アスピリン(ASA)の内服が導入された。手術が行われた2症例を提示する。<症例1>4か月時に心雑音にてCAFの診断、10か月にカテーテル検査で近位型CAF(RCA-RA)、Qp/Qs=1.65で、流入部(RA)閉鎖術を施行した。術後盲端化した20mm台の瘻がRCA起始部より残存し、ASAおよびワーファリンを開始、術後9年が経過した現在も瘻内血栓形成が緩徐に進行しているが、RCA閉塞はなく現在に至っている。<症例2>9か月時に心雑音にてCAFの診断、1歳9か月にカテーテル検査で近位型CAF(RCA-RA)、Qp/Qs=1.5と診断され、流入部(RA)閉鎖術を施行した。術後は14mmの瘻が残存したためASA内服を開始したが、血栓性閉塞予防のため、9歳時に瘻に対してAVP2を用いたカテーテル塞栓術を施行し内服を終了した。【考察】CAFの近位型では、瘻の流入部のみの閉鎖を行った場合は盲端瘻となり、ASA療法を基本とした抗血栓療法が推奨される。ワーファリンなどの追加療法が必要か否かについては今後の症例の蓄積が必要である。また、残存瘻の形態によっては追加のカテーテル治療が有用であると考えられた。