[P46-2] 無症候性に右冠状動脈起始の閉塞をきたした心室中隔欠損・大動脈弁尖変形の一例
キーワード:心室中隔欠損, 右冠状動脈閉塞, 大動脈弁尖変形
5歳女児。川崎病や不明熱、下気道感染、虚血症状はなく、成長や発達は順調だった。生後1ヶ月で当院紹介受診し、流出路心室中隔欠損(VSD)、右冠尖逸脱、卵円孔開存、肺高血圧(PH)と診断。LVDd112%、VSD3.5mm vel2.7m/s、RCCDI0.33で大動脈弁逆流(AR)はなく無治療無制限とした。生後2ヶ月にVSD vel4.3m/sとPHは消失し乳児期早期の手術は回避され、AR出現時に手術考慮とした。生後4ヶ月に僧帽弁逆流(MR)triが出現。1歳4ヶ月にLVDd<110%と左室容量負荷は消失。5歳4ヶ月にRCCDI0.5と明らかに進行し、今後ARやvalsalva洞破裂等の可能性を説明し、家族は手術を希望され、心カテーテル検査を行った。両心機能は良好、LVEDV113%(Area length法)、RCCDI0.42、無冠尖の変形、ARtri、軽度僧帽弁前尖逸脱、MRslを認めた。右冠状動脈(RCA)でSeg1は壁不整で近位側が狭く、LMTから前方に走行する側副血行路より造影され、RCA起始の閉塞が疑われた。seg3・4はLCX, LAD遠位からの側副血行路で逆行性に造影され、遠位側で太かった。Seg2は血液が拮抗し造影不良だったと考えられた。血液検査で逸脱酵素や心筋マーカー、凝固能の異常はなく、ホルター心電図、トレッドミルで有意な虚血所見はなかった。心筋シンチで安静時に心尖部から前中隔で灌流欠損を認めるが負荷時には認めず一般的な虚血と逆の変化を示し、虚血所見は陰性と判断した。造影CTではRCA起始部から閉塞しseg3・4は逆行性に造影され、心カテ所見と一致した。RCA起始閉塞を認めるも側副血行路で灌流され虚血所見がないことからRCAへの介入はせず、6歳でVSD閉鎖術を行った。当症例はVSDに伴う生来大きい大動脈弁尖変形が緩徐に進行し、LCAから側副血行路が発達し虚血を来さなかったと考えられた。RCAの成長は十分ではなく、早期の診断で救済された可能性はある。よって大動脈弁尖の変形が強ければ、早期のカテーテル検査による冠状動脈の評価が考慮される。