The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Digital Oral

川崎病・冠動脈・血管

デジタルオーラルII(P46)
川崎病・冠動脈・血管 4

指定討論者:鈴木 啓之(和歌山つくし・医療福祉センター)
指定討論者:長井 典子(岡崎市民病院)

[P46-3] 母体抗SS-A抗体陽性の先天性完全房室ブロックに上行大動脈拡張と肺動脈拡張を合併した一例の長期報告

浅見 雄司, 新井 修平, 中島 公子, 池田 健太郎, 下山 伸哉, 小林 富男 (群馬県立小児医療センター 循環器科)

Keywords:抗SS-A抗体, 先天性完全房室ブロック, 上行大動脈拡張

【背景】母体抗SS-A抗体陽性の先天性完全房室ブロックに上行大動脈拡張を合併した症例が報告されているが、長期経過の報告は少ない。我々は、母体抗SS-A抗体陽性の先天性完全房室ブロックに上行大動脈拡張と肺動脈拡張を合併し、出生直後より20年間にわたり経過を観察した男性を経験したので報告する。【症例】母は28歳、初産婦。在胎22週で胎児房室ブロックが疑われ、胸水貯留が徐々に増悪した。在胎34週4日に胎児水腫、完全房室ブロックの診断となり、緊急帝王切開にて2650gで出生した。出生時高度の胎児水腫を認め、心拍数40-50回/分の完全房室ブロックでイソプロテレノールに反応なく、経臍静脈ペーシング(VVI 120)とし、日齢6に永久的ペースメーカー植え込み術を施行した。後に母体の抗SS-A抗体陽性が判明した。出生時より肺動脈弁狭窄を認めており、生後4か月(体重4.5kg)で心臓カテーテル検査を施行。肺動脈弁で57mmHgの圧較差あり、バルーン拡張術にて圧較差は20mmHgまで改善した。造影にて上行大動脈は18.4mm(z=6.44)と拡張しており、主肺動脈も24.5mm(z=6.30)と拡張を認めた。以後外来管理を継続中であるが、心不全なく、成長、発達は良好である。現在20歳となりカンデサルタン、カルベジロールを内服中であるが、上行大動脈は47.3cm(z=7.87)と拡張は残存している。肺動脈弁狭窄は増悪なく経過しているが、主肺動脈は42.5mm(z=3.88)と改善傾向であるものの拡張は残存している。【考察】先天性完全房室ブロックに上行大動脈のみの拡張を合併する例は、母体抗SS-A抗体陽性例で有意に多く、上行大動脈の拡張は長期的に残存することが報告されている。本症例は20歳になるが上行大動脈の高度の拡張が残存しており、今後も慎重な観察を要する。また、本症例において主肺動脈拡張は当初狭窄後拡張によるものと考えられたが、長期的に拡張は残存しており、狭窄後拡張以外の複合的な要因による可能性があると考えられた。