The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Digital Oral

学校保健・疫学・心血管危険因子

デジタルオーラルII(P47)
学校保健・疫学・心血管危険因子

指定討論者:大野 拓郎(大分県立病院)
指定討論者:佐藤 智幸(自治医科大学とちぎ子ども医療センター)

[P47-1] 注意欠陥多動障害の治療中に、学校心臓検診での心雑音を契機に発見されたバセドウ病の1例

中西 祐斗, 荒井 篤, 吉村 元文, 渡辺 健 (田附興風会 医学研究所北野病院 小児科)

Keywords:学校心臓検診, バセドウ病, 注意欠陥多動性障害

【症例】12歳女児。母からみて幼少期から多動傾向があったという。11歳時から不安、イラつき、集中力低下で近医(小児神経医)を受診し注意欠陥多動障害(AD/HD)と診断された。アトモキセチン、アリピプラゾール内服で症状の改善をみたという。12歳頃より易疲労感があった。学校心臓検診で安静時心電図は心拍数99bpmで正常洞調律とされたが、心雑音のため3次検診で当科を受診した。心尖部に収縮期雑音(Levine 2/VI)を聴取した。心エコーで僧帽弁逸脱(中等度)兼閉鎖不全(軽度)を認め、左室拡張末期径41.0mm(88%)、左室駆出率 0.63、左室後壁厚6.2mm(92%)と左室容量がやや低値であった。安静時心電図は正常洞調律で心拍数は117bpmと洞頻脈が疑われた。血圧112/75mmHgと軽度高値であった。患児の前でAD/HDに関する詳細な問診は憚られ、他院で基礎疾患の除外は済んでいるものと思い込んだ。検診心電図が心拍数100bpm以下であったこと、AD/HD治療薬がいずれも頻脈を起こしうることを踏まえ、この時点では薬剤および・または緊張による頻脈と考え、心雑音は僧帽弁閉鎖不全によると判断し無治療無制限で経過観察とした。しかし帰宅後に保護者に電話で改めて病歴を問うと今まで血液検査を一度もしていないと判明し後日再診とした。TSH 0.009μIU/m2、Free T3 8.88pg/m2でTSH受容体抗体が陽性であり、甲状腺はびまん性に腫大し圧痛はなく精査のため入院した。AD/HD治療薬を中断し、アテノロールでレートコントロールをした。その後バセドウ病の診断に至り抗甲状腺薬が開始された。【考察・結語】洞性頻脈が疑われたが、バセドウ病の診断に時間を要した症例を経験した。検診心電図の心拍数<100bpm、AD/HD症状との類似、AD/HD治療薬の副作用、他院での診療内容の確認不足などが誘因と考える。洞性頻脈を疑った場合に基礎疾患の除外として血液検査を行うことの重要性を再認識した。