第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

外科治療

デジタルオーラルII(P50)
外科治療 3

指定討論者:小泉 淳一(岩手医科大学 心臓血管外科)
指定討論者:上松 耕太(和歌山県立医科大学)

[P50-1] 完全大血管転位症スイッチ術後遠隔期の冠動脈狭窄に対して手術介入を行なった2症例

杉本 愛, 白石 修一, 渡邉 マヤ, 高橋 昌, 土田 正則 (新潟大学大学院 医歯学総合研究科 呼吸循環外科)

キーワード:冠動脈形成術, 完全大血管転位症, 冠動脈狭窄

【目的】完全大血管転位症スイッチ術後遠隔期に徐々に顕在化した冠動脈狭窄に対し, 冠動脈形成術を行った2例を報告する.
【症例1】8歳, BW 22 kg. TGA/IVS: 1RCx 2L. 日齢11, Jatene(Lecompte)手術施行. 1歳時の心カテでは冠動脈の有意狭窄なし. 6歳時, 造影CTでLAD起始部がaAo-mPAに挟まれる形で圧排される所見あり. 7歳時, 運動時胸痛が出現, 心電図上V3-5のST-T低下の増悪を認め, 心筋シンチで新たに心尖部の再分布が出現し, 手術の方針となった.
手術所見: 心停止後, mPA trunkを前回縫合線に沿って離断. LADはPA基部に前方から圧排される所見. aAo前壁を横切開して内腔を確認. LAD起始部に高度狭窄は認めないものの分岐角度が急峻だった. aAoからLAD上面を切開しSVGパッチを用いてLAD開口部を形成. また, mPA吻合口を右方にずらし再建した. 術後トレッドミル検査で胸痛の出現なし. アスピリン内服を継続し19 POD退院した.
【症例2】10歳. BW 30 kg. TGA/VSD: 1RCx 2L. 日齢14, Jatene(Lecompte),VSD閉鎖施行. 6歳時, 心筋シンチでLAD領域の血流低下が疑われた. 冠動脈造影ではLAD起始部の高度狭窄およびsubAS(LV-aAo=30 mmHg)を指摘され, 運動制限とアスピリン内服で経過観察された. 8歳時, subASの増悪(LV-aAo=76 mmHg)があり手術の方針となった. 術前CTでは, LAD開口部の頭側への移動と, 拡大したValsalva洞とが狭窄の主因と考えられた.
手術所見: 心停止後, mPA trunkおよびaAoを前回吻合部で離断. 経大動脈弁的に大動脈弁直下の線維性肥厚組織および中隔心筋を切除. LADの冠動脈ボタンを作成. 拡大した Valsalva洞壁を, 下5mm, 左10mm, 右5mmずつ切除し, そこに冠動脈ボタンを再移植, Valsalva洞を縫縮するように再建してaAoを再吻合した. 30POD, アスピリン内服を継続し退院した.
【結論】完全大血管スイッチ術後遠隔期の冠動脈狭窄に対し, 症例に合わせて冠動脈形成術を行い, 良好な経過を得られた.