[P50-2] 大動脈弁下狭窄の合併が疑われる心室中隔欠損症へのLuciani法の有効性の検討
Keywords:左室流出路狭窄, 大動脈弁下狭窄, Luciani法
【背景】当院では術前の心エコー検査でposterior malalignmentによるSASの合併が認められた症例には、VSD閉鎖の際に将来的なSASの増悪予防のため、Luciani変法を積極的に実施する方針としている。Luciani変法とは結節縫合でのVSD閉鎖ではなく、連続縫合でのVSD閉鎖をLuciani変法とした。【目的】当院で行っているLuciani変法の有効性に関しての検討を行った。【対象・方法】術前のエコーで左室流出路(LVOT)/ 大動脈弁輪径(AoV)≦0.8となるようなSASの症例にLuciani変法を行なった。対象は2007年4月から2021年1月までに当院でLuciani変法を行なった5例。その内訳はCoA complexに先行して大動脈再建と肺動脈絞扼術を行なったのちにVSDの根治を行なった症例が1例、IAA complexとCoA complexで一期根治を行なった症例がそれぞれ1例、VSDのみの症例が2例であった。Luciani変法を施行時の月齢は平均3.8±4.2ヶ月、体重は5.03±1.53 kgであった。これらの症例に対しLVOT/ AoVをエコーで計測し、手術前後の比較を行なった。また、遠隔期のSASの出現や大動脈弁閉鎖不全症などの発生の検討も行なった。【結果】手術死亡、遠隔死亡なし。LVOT/ AoV値は術前0.74±0.07 から 術後 0.93±0.05と改善を認めた。また、大動脈弁逆流などによる遠隔期の再手術が必要となった症例も認めなかった。【考察・結論】従来のLuciani法では結節縫合のため、左室への縫合針の刺入の際に視野展開などが煩雑であった。それと比較してLuciani変法の連続縫合でのVSD閉鎖中は、縫合糸の牽引により左室側の視野展開は比較的容易である。そのため左室側の縫合はそれほど難渋せずLVOTの拡大を行えるため従来のLuciani法よりも簡便に行えるのが利点である。Luciani変法は通常のVSD閉鎖に一手間加えることで将来的なSASの発生を予防できる可能性があり、積極的に行うことが望ましいと考える。