[P51-2] 共通肺静脈閉鎖症に三心房心を合併した非常に稀な一例
Keywords:Common pulmonary venous atresia, Cor triatriatum, Transverse atrial incision
【背景】共通肺静脈閉鎖症(CPVA:common pulmonary vein atresia)は, 総肺静脈還流異常症(TAPVC:total anomalous of pulmonary venous connection)の特殊型で,共通肺静脈と心房,あるいは体静脈との間に交通がない稀で致死的な疾患である.今回我々は,CPVAに対する手術後に三心房心(CorT:Cor Triatriatum)の合併が確認され,追加手術を要した症例を経験したので報告する.【症例】日齢0,3170gの女児.生直後より重度チアノーゼを認め,先天性心疾患疑いで当院に搬送された.CXR所見は著明なうっ血像を認めたが,CTRは46%であった.心臓超音波検査ではTAPVC(Darling分類 1b型)が疑われた.動脈血酸素飽和度が改善せず,循環動態不安定なことから肺静脈狭窄を疑い,生後約5時間で緊急手術を行った.術中に共通肺静脈に結合する垂直静脈が同定できずCPVAと診断し,両心房横断切開を用いた左房・共通肺静脈吻合術を施行した.二期的閉胸を要したが閉胸後は概ね良好に経過し,心臓超音波検査で吻合部狭窄は認めなかった.しかし,徐々に肺高血圧増悪を認めたため造影CT検査を施行した所,左房内に異常隔壁を認めCorTの合併と診断した.日齢139に左房内隔壁切除を施行して肺高血圧は改善し,日齢169に自宅退院となった.【考察】左房内隔壁の病理学的所見では,炎症細胞の浸潤を認めず,初回手術に伴う組織増生ではなく,先天性に存在した隔壁であることが示唆された.初回手術時にCorTを診断できなかった理由として,肺血流循環がないため左房通過血流が減少し心臓超音波検査にて左房内が明瞭に描出できなかったこと,循環動態悪化により造影CTを行う余裕が無かったこと,手術時間を短縮するために左房内を十分に観察できなかったことが挙げられる.【結語】我々は,CPVAにCorTを合併した非常に稀な症例を経験した.稀な合併疾患を見過ごさないためにも,術中の詳細な心内構造の観察が大切であると再認識した.