[P54-3] 部分または総肺静脈還流異常症に対するdouble decker手術の成績
Keywords:PAPVC, TAPVC, double decker repair
【背景】上大静脈SVCに還流する肺静脈還流異常の修復術は術後SVC狭窄、肺静脈狭窄、洞不全の発生などの問題点が挙げられる。【目的】SVCに還流する部分PAPVCまたは総肺静脈還流異常症TAPVCに対するdouble decker手術の成績を明らかとする。【方法】2007年1月から2020年12月までにdouble decker手術を施行した部分または総肺静脈還流異常の13例を後方視的に検討した。術後肺静脈狭窄、SVC狭窄、洞不全症候群、再手術を調査。それらに関連するリスク因子として体重、ASDの位置、ASD拡大の方向、両側SVCの有無を調査した。【結果】手術時年齢4.5歳(0.1-39)、体重16.0kg(3.0-64.5)。主診断PAPVC+ASD7例、PAPVC+TOF3例、PAPVC+DORV1例、混合型TAPVC(1b+1b)+VSD1例、混合型TAPVC(1b+2b)+cAVSD+DORV1例。心房間交通は静脈洞ASD5例、PFO4例、二次孔ASD3例、一次孔ASD1例。PLSVC合併2例。初回手術10例。手術は全例胸骨正中切開、人工心肺、心停止下に施行。心房内血流転換パッチは全例自己心膜を使用。ASD拡大術は10例に施行。SVCは右心耳から右房壁で再建し3例で心膜パッチの補填を要した。心停止111分(68-206)、人工心肺175分(96-331)。ICU滞在4日(1-11)、入院16日(8-39)。手術死亡無く退院時の肺静脈狭窄、SVC狭窄、洞不全は認めなかった。経過観察期間80ヶ月(2-132)。肺静脈狭窄を2例(術後5ヶ月、70ヶ月、いずれもASD部分での狭窄)に認め、TAPVCの1例に再介入施行、DORVの1例はRVOT導管交換時の再介入を予定している。SVC狭窄、洞不全は認めなかった。【考察】肺静脈狭窄(ASD狭窄)をきたした2例はいずれもPFOと二次孔ASDでASD拡大術をしたが狭窄を発症した。SVC側への拡大が不十分であった可能性が示唆された。両側SVCでもSVC狭窄は認めなかった。【結語】Double decker手術は体肺静脈狭窄や洞不全の発生が少ない優れた術式である。肺静脈狭窄予防のため静脈洞ASDでない場合、SVC側のASD拡大が重要と思われた。