[P56-4] 当センターにおける先天性心疾患児の認知機能に関する実態調査
Keywords:先天性心疾患, 認知機能, 日常生活や学校生活
【はじめに】先天性心疾患児の生存率は向上し,成人を迎える児は増加している.一方,長期生存児において,認知機能障害や運動発達の遅れ,教科学習を含む学校生活での困難さが報告されている.しかし,国内の先天性心疾患児の現状は検証されていない点も多い.本研究の目的は,先天性心疾患児の認知機能について明らかにすることである.【対象・方法】先天性心疾患と診断され,外科的加療が実施された5~12歳の児41名を対象に日本版WISC-4知能検査と日本版DN-CAS認知評価システムを実施した.WISC-4では全検査IQおよび4つの指標得点(平均:100,SD:15)を,DN-CASでは全検査標準得点および4つの標準得点(平均:100,SD:15)を算出した.また各検査における分類カテゴリーをもとにそれぞれの分類における人数の割合を検討した.【結果】WISC-4において,全検査IQおよび4つの指標得点(言語理解,知覚推理,ワーキングメモリー,処理速度)の平均は89.2±16.5,91.3±14.3,91.8±17.2,91.0±18.8,90.1±14.6であった.また,DN-CASにおいて,全検査標準得点および4つの標準得点(プランニング,同時処理,注意,継次処理)の平均は88.9±17.4,94.5±14.7,89.0±17.0,90.1±16.0,93.2±16.6であった.人数の割合を検討したところ,「平均の下」以下のカテゴリーに該当する割合は理論上25%であるのに対して,WISC-4では対象児の34.1%から53.7%が、DN-CASでは36.6%から53.7%が前述のカテゴリーに該当した.【結論】先天性心疾患児の認知機能の平均はすべての下位検査で85以上(-1.0SD以上)であったが,各検査の分類カテゴリーに基づいて検討したところ,「平均の下」以下に該当する児は理論上の割合よりも多く,実際に,認知機能に困難さを抱える児童が一部存在することが示唆された.引き続き対象者を拡大し,日常生活や学校生活等に及ぼす影響について検証していきたいと考えている.