第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

胎児心臓病学

デジタルオーラルII(P6)
胎児心臓病学 1

指定討論者:石井 徹子(千葉県こども病院)
指定討論者:河津 由紀子(福山市民病院 小児科)

[P6-4] 静脈管無形成と混合型総肺静脈還流異常を合併した胎児右側相同の一例

村上 卓1, 野崎 良寛1, 石踊 巧1, 嶋 侑里子1, 堀米 仁志1, 高橋 実穂2, 加藤 秀之3, 松原 宗明3, 平松 祐司3 (1.筑波大学医学医療系 小児科, 2.筑波メディカルセンター病院 小児科, 3.筑波大学医学医療系 心臓血管外科)

キーワード:胎児診断, 静脈管無形成, 総肺静脈還流異常

【はじめに】静脈管無形成(ADV, agenesis of the ductus venosus)は、胎児心不全や胎児水腫の原因となり、合併奇形や染色体異常が予後に影響する。ADVと混合型総肺静脈還流異常(TAPVC, total-anomalous pulmonary venous connection)を合併し、特異な循環動態を呈した右側相同の胎児診断例を報告する。【症例】母は27歳、3経妊2経産、妊娠27週に前医産院で口唇裂と先天性心疾患を疑われ、妊娠29週の当院胎児心エコーで右側相同、単心房、単心室、肺動脈閉鎖、下心臓型TAPVCと診断された。軽度の共通房室弁逆流を認めたが心拡大はなかった。妊娠31週の胎児心エコーでは静脈管が描出されず、臍静脈の血流は肝内で垂直静脈と連続し共通肺静脈へ向かい、共通肺静脈は左上大静脈から心房左側へ還流し、ADVと混合型TAPVCの合併と診断された。共通肺静脈と左上大静脈は拡大していたが肺静脈狭窄は認めず、心拡大や房室弁逆流の増悪はないため満期まで待機し、児は誘発分娩で在胎38週6日に出生体重2,752gで仮死なく出生した。出生後の心エコー所見は胎児診断と同様だが、肺動脈はnon-confluentで両側動脈管依存であった。Lipo-PGE1持続静注療法を行い、生後1か月時にBTシャント術と肺動脈形成術を施行した。下心臓型TAPVCの垂直静脈は肝静脈と交通していたが血流は自然消退した。上心臓型TAPVCは両方向性Glenn手術と同時に修復する方針である。【考察】ADVとTAPVCが合併した報告は一例のみで、下心臓型TAPVCの垂直静脈は肝類洞を介し心房へ還流していた。本症例は混合型のため臍静脈血流は垂直静脈を介し共通肺静脈へ流入し、左上大静脈から心房へ還流する特異な循環動態を呈した。出生後の胎盤循環からの離脱による容量負荷の軽減と上心臓型TAPVCへの待機手術を予測した計画分娩が可能であった。【結語】ADVとTAPVCの合併は稀だが様々な循環動態を呈する可能性があり、胎児診断は重要である。