[P6-6] 稀なcircular shuntを呈した胎児肺動脈弁欠損症候群の1例
キーワード:circular shunt, 肺動脈弁欠損症候群, 三尖弁閉鎖症
【はじめに】肺動脈弁欠損症候群(APVS)は、肺動脈弁の痕跡と右心室の形態異常を伴うまれな症候群であり、circular shuntを呈するとされている。しかし三尖弁閉鎖症(TA)を伴う場合は、circular shuntを伴わないと考えられている。今回我々は、心室中隔欠損(VSD)を介するcircular shuntを呈したTAを伴うAPVSの胎児例を経験したので報告する。【症例】母体は25歳、3妊1産。在胎25週5日、心筋症疑いで紹介となった。FS14%、Tei index0.6と左心機能は低下し左室緻密化障害を認めた。CTAR60%と拡大し著明な腹水と皮下浮腫を認めた。右室低形成、三尖弁閉鎖、肺動脈弁欠損、動脈管(DA)の血流は左右シャントとなっていた。心室中隔組織は粗で筋性部に大きな欠損孔を認めた。DA血流は肺動脈を逆流、右室、VSDを経て、左室に流入していた。その後、胎児水腫はさらに進行し、在胎33週1日、経腟分娩で出生。出生体重3850g、著明な全身の硬性浮腫とチアノーゼを認めた。体動は認めたが啼泣なくカンガルーケアを行った後、生後50分で死亡確認となった。【考察】TAを伴うAPVSは通常は胎児死亡しないといわれている。これは、三尖弁の閉鎖により肺動脈の逆流が制限され動脈管が狭くなるためと考えられている。本症例では、大きなVSDを介して右心室から左心室への短絡が発生しcircular shuntを形成した上、左室緻密化障害を伴う心筋異常もあり、心拍出量を低下させ、さらに胎児水腫を増悪させた可能性が考えられた。VSDを伴うAPVSは非常に稀であるが、本例のように大きなVSDを伴う場合はより重篤な胎児心不全を引き起こし、胎児死亡をきたす可能性もあると考える。