第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

胎児心臓病学

デジタルオーラルII(P7)
胎児心臓病学 2

指定討論者:菱谷 隆(京都府立医科大学附属病院)
指定討論者:武井 黄太(長野県立こども病院)

[P7-1] 何故我々はこの複雑心奇形を見逃したか?

佐藤 工, 佐藤 啓 (国立病院機構弘前病院 小児科)

キーワード:胎児心エコー, 複雑心奇形, 見逃し例

【緒言】腹臥位の胎位における胎児心エコー検査では,椎体の音響陰影を避ける探触子操作が必要となり,心臓軸や流出路~大血管の描出が困難となる場合が少なくない.今回我々は,腹臥位の胎児に対する胎児心エコー検査で見逃された複雑心奇形の2症例に対し,その要因について保存動画をもとに検証した.【症例1】TOFの男児.在胎26週で胎児心臓スクリーニングを施行し正常心と判定.生後の1か月健診で心雑音を契機に診断された.見逃しの要因として,(1)胎位は主に腹臥位~右側臥位で,心臓軸の評価が困難,(2)5-chamber viewで左室流出路が探触子から遠く,VSDを左室流出路と判断,(3)大動脈がI-signの如く太く描出され,d-TGAも疑ったが,肺動脈とspiralに走行していたため,正常範囲と判定したことが挙げられた.【症例2】DORV (subaortic VSD)の女児.在胎28週で胎児心臓スクリーニングを施行し,心臓構造異常を伴わない完全内臓逆位と判定.生後の1か月健診で体重増加不良と多呼吸を契機に診断された.見逃しの要因として,(1)胎位は主に腹臥位~左側臥位で,心臓軸の評価が困難,(2)5-chamber viewでsubaortic VSDを左室流出路と判断,(3)肺動脈が大動脈よりやや太く描出されたが,やはり両者がspiralに走行していたため正常範囲と判断した,(4)内臓逆位のため,検査全般で左右の確認に関心が集中したことが挙げられる.正常心では,心室中隔―大動脈ラインが「く」の字に屈曲するが,2症例ともに同ラインは直線的であった.【結語】今回の見逃し例の経験から,大動脈の前方偏位を伴う疾患では,直線的な心室中隔―大動脈ラインが,腹臥位の胎位においても胎児診断の契機となる可能性がある.見逃し例を他施設と情報共有することは,個々の努力よりも技術向上に寄与するものと思われ報告する.