The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

Digital Oral

胎児心臓病学

デジタルオーラルII(P7)
胎児心臓病学 2

指定討論者:菱谷 隆(京都府立医科大学附属病院)
指定討論者:武井 黄太(長野県立こども病院)

[P7-5] デキサメタゾンの母体投与後に胎児完全房室ブロックが正常に復した、母体抗SS-A抗体異常高値の一例

石井 邦哉1, 石戸 博隆2, 岩本 洋一2, 増谷 聡2 (1.埼玉医科大学総合医療センター 小児科新生児部門, 2.埼玉医科大学総合医療センター 小児科小児循環器部門)

Keywords:胎児完全房室ブロック, 抗SS-A抗体, デキサメタゾン

【はじめに】小児の先天性完全房室ブロック(以下cAVB)は、母体抗SS-A抗体に起因することが多く、洞調律化は稀である。この病態は妊娠中期に急性発症・増悪し、徐脈や併発する心筋障害により胎児心不全に至る可能性も高く、cAVBに対しての有効な治療法は未確立である。胎児期・早期新生児期にcAVBを呈したが、デキサメタゾンの母体投与後に洞調律化した症例を報告する。【症例】母は30歳、スリランカ人。膠原病の既往なし。在胎25週に当院産科で心室期外収縮の頻発を疑われ、在胎26週に当科初診した。胎児心エコーにて心房レート156/分、心室レート101/分で心房・心室収縮に関連は皆無であり、胎児cAVBと診断した。この後母体抗SS-A抗体異常高値が判明し、心筋障害予防目的に在胎27週よりデキサメタゾンの母体投与を開始した。在胎31週後半よりII度房室ブロックとなり、更には房室ブロックの消失を確認した。在胎37週4日、頭位自然分娩で出生、生下時体重2265g、仮死なし。出生後にも一時的に心室拍数80-100/分のcAVBを呈したが、半日で洞調律へと改善し、以後生後3か月の現在まで正常洞調律を維持している。胎児期から一貫して、心不全兆候や収縮能低下を認めていない。【考按】本症例のcAVB消失の経過は、母体デキサメタゾン投与が有効であった可能性を示唆する。胎児cAVBに対するフッ化ステロイドの母体投与は、cAVBの改善に効果あり・全く改善に寄与しないと近年のmeta-analysisでの評価は大きく分かれている。有効性を期待できる症例をいかに抽出できるかについて、さらなる多数例での検討が必要と考える。