The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

Digital Oral

胎児心臓病学

デジタルオーラルII(P7)
胎児心臓病学 2

指定討論者:菱谷 隆(京都府立医科大学附属病院)
指定討論者:武井 黄太(長野県立こども病院)

[P7-6] 先天性完全房室ブロックに対するペースメーカ植え込み術 -胎児循環と出生後の心機能変化からみた適応-

佐藤 啓1, 齋木 宏文1, 齋藤 寛治1, 滝沢 友里恵1, 桑田 聖子1, 中野 智1, 後藤 拓弥2, 松本 敦1, 高橋 信1, 小泉 淳一2, 小山 耕太郎1 (1.岩手医科大学附属病院 小児科, 2.岩手医科大学附属病院 心臓血管外科)

Keywords:先天性完全房室ブロック, ペースメーカ, 血行動態

【背景】先天性完全房室ブロック(cCAVB)のペースメーカ(PM)適応は心拍応答と心不全の有無により決定する。出生前診断され、胎児水腫を伴わない場合、出生後の心拍応答と外界への適応を見極め、PM留置の要否を判断することが重要であり、血行動態の理解が不可欠である。【症例】在胎16週に診断したcCAVBの男児。母体SSA・B抗体陰性。心室レートは50bpm台前半、胎児水腫なく経過したが、在胎37週に心拡大を指摘され、帝王切開で出生した。初期啼泣良好で呼吸障害を認めなかったが、心拍数は終始50-55bpmであった。左室拡張末期径(LVDd)は17.5mm (93.7%N)、駆出率は62.2%であり、1回拍出量(SV)と血圧から算出するEaは15.9mmHg/ml、V0=0mlと仮定したEesは26.1mmHg/mlであった。正常新生児の適応を考慮すると、本児で必要とされるSVは最低10mlと見込まれ、仮にEesを正常新生児レベルまで上昇させ、後負荷上昇を完全に抑制しても、LVDd 25.6mm (143%N)は必要と考えられるため、肺うっ血は不可避と判断し、同日準緊急的に一時的PM留置術を施行した。一般的な新生児同様、日齢1になって後負荷増強を認め、血圧上昇と著明な駆出率低下に至った。後負荷不適合と診断し、血管拡張薬で管理し、日齢6に恒久的PM植え込み術を施行した。【考察】胎児循環から新生児循環への移行に際し、左室容量負荷および後負荷増大が起こる。心拍数増加が見込めない場合、胎児期の約3倍に至るとされる新生児の心拍出量を、拡張障害のある新生児心筋で、SVを増加して賄うことを余儀なくされる。本症例では出生直後にVTIが1.4倍となったが、今後の循環動態を推定すると、来るべき後負荷増強を凌ぎえないと判断し、出生当日に一時的PM留置とした。【結論】胎児cCAVBでは、出生後循環への適応障害も想定したうえで、心拍数のみならず、収縮・拡張能を含めた心機能評価を踏まえ、PM留置の必要性について検討することが安全な周産期管理に寄与する。