[P8-4] Total cavopulmonary shunt (TCPS) 手術を要する疾患群における酸素飽和度の検討
Keywords:Total cavopulmonary shunt operation, Kawashima procedure, Oxygen Saturation
【背景および目的】Total cavopulmonary shunt (TCPS) 手術は奇静脈/半奇静脈結合を伴う下大静脈離断を有する単心室症に対する術式として1984年に川島先生によって報告された。他疾患におけるGlenn手術に相当する術式ではあるが、血行動態の変化様式が異なる。Fontan循環を目指す症例において、肺動静脈瘻や体静脈側副血行路による低酸素血症が問題となることがある。今回われわれはTCPS手術に関連した酸素飽和度について検討したので報告する。【方法】当院でTCPS手術からTCPC手術まで到達した15例を後方視的に検討した。診断は右室型単心室症14例、左室型単心室症1例であり、全例が左側相同であった。上大静脈は右側4例、左側4例、両側7例であり、奇静脈結合6例、半奇静脈結合8例、両側1例であった。TCPS手術における平均月齢は7.1カ月 (3.8-13.2カ月)、平均体重は6.1kg (3.5-7.4kg)。TCPC手術における平均月齢は17.9カ月 (12.3-22.7カ月)、平均体重は9.5kg (6.8-12.1kg)、TCPS手術からTCPC手術までの待機期間は平均11.2カ月 (6.4-15.2カ月)であった。TCPC術式は肝静脈を肺動脈へ還流させる術式7例、肝静脈を奇静脈/半奇静脈へ還流させる術式7例、肝静脈と奇静脈/半奇静脈の結合を確認した上で肝静脈を離断する術式1例を施行した。【結果】肺動静脈瘻はTCPS術後/TCPC術前に全例で認めた。TCPS術後/TCPC術前の平均SaO2は80.5% (70-89%)であり、TCPC術後の平均SaO2は91.5% (84-95%)であった。TCPS手術時の月齢および体重が低いとき、TCPS術後/TCPC術前およびTCPC術後のSaO2は低い傾向を認めた。【考察および結語】肺動静脈瘻や体静脈側副血行路と関連するものとして、非拍動性の肺血流やHepatic factorの欠如などが挙げられているが、はっきりとした原因は不明である。TCPC術後の酸素飽和度に関連するものとして、TCPS手術時の月齢や体重が示唆されたことは、TCPS手術を施行する時期を検討する一助となると考えられる。