The 58th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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メンターレクチャー

メンターレクチャー(I-ML)
My translational research journey : ARDSのメカニズムと治療ターゲットを追って

Thu. Jul 21, 2022 4:30 PM - 5:20 PM 第1会場 (特別会議室)

座長:土井 庄三郎(国立病院機構 災害医療センター)

[I-ML-01] My translational research journey : ARDSのメカニズムと治療ターゲットを追って

高田 正雄 (Imperial College London/Chelsea and Westminster Hospital)

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、成人の集中医療において、そしておそらく小児の集中治療においても、現在最も重要な課題である。2020年に始まり完全な収束に至っていないCOVID-19パンデミックにより、医療と社会におけるARDS の重要性は大きく脚光を浴びている。しかしこの30数年の集中治療の飛躍的進歩にも関わらず、ARDSの死亡率は未だ高くまた特異的な治療法も確立されておらず、ARDS研究は大きな転機を迎えている。

私は大学卒業後小児科医としてスタートを切り、当時黎明期であった小児集中治療という領域に惹かれ、麻酔集中治療科に転向した。カナダトロントでの臨床研修の後、世界トップの臨床医にも疾患の病態生理やメカニズムは未知の部分が多いこと、我々一人一人が何か新しいことを見つける必要性があることに遅ればせながら気づき、卒後8年目でアメリカバルチモアで研究をスタートした。その後日本の国立小児病院(成育医療センターの前身)での臨床と研究の日々、アメリカ・ボストンでの2度目の留学生活を経て、縁あって英国Imperial Collegeに赴任し、ARDSのメカニズムと治療ターゲットに関する研究に従事して現在に至っている。

本講演では、現在までのARDS研究の問題点を概観し、今後必要な方向性と、従来と根本的に異なる発想からの研究の重要性を議論し、また我々の最近の研究成果、特に「細胞外小胞」のARDS治療の新ターゲットとしての可能性を紹介する。合わせて私自身の今までのキャリア上のkey wordであるbenchとbedsideをつなぐ「translational research」の、臨床医学における本質的な重要性に関して考えてみたい。