[I-MSS-01] 医療安全最前線~守りの美学
Keywords:医療安全, 医療事故, リスクマネジメント
医療事故の報告が、新聞、テレビ、雑誌などをにぎわすことは常となり、我々医療従事者はどのような対策をもとに医療事故をなくすかが重要事項となっている。手術における患者取り違えの事例が起きた1999年頃から、各病院には医療安全対策室やリスクマネジメント委員会が発足し、医療におけるリスクマネジメントに関する講習会の参加義務付け等が盛んになってきた。その一方で、世論の病院・医師への要求は厳しくなってきており、医療行為の中で患者が死亡するようなことがあると、業務上過失致死の疑いをもたれるなど、海外では考えられないことが起きてきている。このような環境の中で病院が存続するためには、まず患者対応、インフォームドコンセント、記録の充実など、日常で当たり前のごとく行われている業務の見直しが、特に重要であると考える。医療訴訟事例の診療科別件数を調べると、一番リスクが高いと思われる小児科の訴訟件数が他科と比較して異常に少ない。これは子を診てくれる医師が子の両親にとって神様のような存在となり、医師と両親の間の信頼関係が、非常に強固に構築される可能性が高くなるからである。また、各病院や診療所でもマニュアルを作成し、いかに医療事故を減らすかということに力を注いでいる。もちろんマニュアルを作成、実行することにより、医療事故が減少する可能性は高まる。しかし、医療訴訟の内容を確認すると、マニュアルを超え、マニュアルではカバーしきれない人間関係から始まっているものがほとんどであり、「医療訴訟は決して患者の重症度とは比例していない」のである。本講演では、1)医療裁判の現状、2)インシデントレポートについて、3)病棟におけるリスクマネジメント、等について述べることとする。