[I-OR01-03] 鹿児島県における先天性心疾患の発生頻度および胎児診断
キーワード:Congenital heart disease, Fetal echocardiography, Prenatal detection rate
【目的】鹿児島県におけるCHDの発生頻度および出生前診断の動向を把握し、特に出生前診断率の低いCHDから胎児心臓スクリーニング検査の課題を明らかにすること。【方法】対象は2015年4月から2021年3月において、鹿児島大学病院産科にて胎児診断されたCHD256例と、出生後にCHDと診断され同院NICUにて管理された44例。このうち新生児期から管理を要する孤発性の心臓構築異常(isolated cardiac structural abnormality; ICSA)のみを抽出し、鹿児島県における重症ICSAの発生頻度および出生前診断率を算出した。【結果】対象期間に県内で発生した重症ICSAの胎児診断および出生後管理は1例を除き全て当院で行われており、本データは鹿児島県のpopulation-based studyに近似しているものと推定された。重症ICSAの出生前診断は121例、出生後診断は28例で、10,000出生あたりの発生頻度は19.3であった。重症ICSA全数における出生前診断率は81.2%であった。一方、疾患別ではTAPVC(33%), ccTGA(50%), DILV/DIRV(50%), dTGA(58.3%), PAIVS(62.5%)の順に出生前診断率が低値であった。【結論】鹿児島県における重症ICSAの発生頻度は既存の大規模なpopulation-based studyと相違なく10,000出生あたり20前後であることが明らかとなった。鹿児島県ではCHDの出生前診断率は高い水準が維持されているが、他報告と同様、TAPVCの出生前診断率が最も低く今後も継続される課題である。また同時に4CVにて異常を指摘しうる疾患が下位5疾患中4疾患を占め、この中に出生直後から危急的な状況に陥る可能性がある疾患が複数含まれていたことは注目される。特にスクリーニングにおける房室弁逆流や心室壁運動および壁構造の観察については浸透していないと考えられ、この点に注目しつつ啓蒙を行うことも更なる診断率向上においては重要であると考えられた。