[I-OR03-01] 本邦の高等学校運動部活動における心停止の記述的疫学
Keywords:スポーツ, 突然死, 高校生
【背景】蘇生教育普及後における高等学校の運動部活動(以下「部活動」)の心停止の疫学的分析は未研究である。【目的】本邦の部活動において発生した心停止の発生率を競技ごとに比較すること、心停止からの蘇生率を経時的に比較すること、及び原因疾患を記述すること。【方法】独立行政法人日本スポーツ振興センターより、2009年から2018年に本邦の部活中に発生した外傷のない心停止55件の発生年月日、性別、学年、競技、原因疾患、AED使用状況、事故の要約を取得した。高体連および高野連の公開資料より各競技の登録者数を引用し、5事例以上ある群の発生率及び部活生徒全体に対する発生率比を算出した。また、蘇生率を算出し期間の前後半で比較した。【結果】心停止後蘇生25例の推定原因は順に特発性心室細動(n=18)、肥大型心筋症(n=4)、拡張型心筋症・Brugada症候群・冠動脈奇形(各n=1)で、突然死30例の推定原因は順に特発性心室細動(n=13)、不明(n=7)、肥大型心筋症・大動脈解離(各n=3)、冠動脈奇形(n=2)、ファロー四徴・劇症型心筋炎(各n=1)であった。事例が5件以上の群は男子サッカー(n=9)、男子バスケットボール(n=8)、男子野球(n=16)、男子野球の1年生(n=10)であり、競技別の発生率(/10万人・年)は、男子野球(0.91件)において最も高かった。発生率比より、部活動生全体と比較して有意に心停止発生のリスクが高かったのは順に男子野球1年生(4.11倍)、男子野球(2.31倍)、男子バスケットボール(2.19倍)であった。調査期間の前半と後半の蘇生率はそれぞれ37.5%と56.5%であった。【考察】米国では野球は突然死のリスクが低く、男子野球で最も心停止の発生率が高かったことは本邦特有の結果である。今後、心停止の発生リスクの高さと原因疾患の関連を検証する必要がある。