[I-OR06-03] 心臓MRIによる右室心筋性状の定量評価の試み
Keywords:T1 mapping, 右室心筋, 心臓MRI
【背景】心筋性状を評価するには心臓MRIのT1 mappingが有用で、心筋の炎症や線維化によるT1値の上昇が知られている。測定の際、左室は心筋壁の厚さが十分にあるため問題になることは少ない。一方右室では心筋壁が薄く、血液によるT1値上昇の影響を受けやすいため、T1値の測定は困難と言われている。しかし、先天性心疾患患者では右室負荷が生じる場合が多く、仮に右室心筋を定量的に評価できれば病態把握に非常に有用である。そこで我々は、本来拡張期で撮影するT1 mappingを収縮期で撮影することで右室心筋性状を評価できるのではないかと考えた。【目的】右室心筋性状を非侵襲的にMRI検査で評価すること。【方法】2021年に当院で心臓MRI検査を施行した計27名(0-41歳)を対象にした。心臓MRI装置はSiemens社製3 Teslaを使用した。T1 mappingを拡張期及び収縮期で撮影し、両心室の心筋性状を評価した。【結果・考察】(1)収縮期T1値が拡張期T1値と同様に心筋性状を評価できるかどうかを左室中隔壁の値から算出した。27名の左室中隔壁の拡張期T1値は1235±104msec(中央値±SD)、収縮期T1値は1218±139msecであり、収縮期T1値がやや低くなるものの、両者は有意な相関関係を示した(R=0.92, p<0.001)。(2) 収縮期T1値は心周期の影響を受けにくいことがわかったため、右室自由壁についても検討した。右室心筋壁厚は拡張期が2.8±1.6mm、収縮期は4.0±1.7mmと上昇し、右室自由壁の拡張期T1値は1333±156msec、収縮期T1値は1267±162msecと左室よりも収縮期でT1値が有意に低下していた(p<0.001)。心周期によるT1値の変化率は左室で3.6%、右室で9.3%であった。右室は拡張期の計測では血液による影響が大きく、収縮期で計測することで右室心筋壁が厚くなり、血液の影響を小さくできたことがわかった。【結論】右室における収縮期T1 mappingは血液によるT1値上昇の影響を少なくすることができ、右室心筋性状の評価に有用である。