[I-OR09-01] 前負荷動員一回仕事量(PRSW)関係を改良した新たな心収縮力指標:前負荷動員収縮期仕事量(PRSSW) 関係
Keywords:心収縮力, 強心薬, 心不全
【背景】心室拡張末期容積-一回仕事量(PRSW)関係の傾き(Msw)は収縮末期圧容積関係(ESPVR)の傾き(Ees)よりさらに負荷依存性が低く、再現性も高い心収縮力の指標として知られる。しかし仕事量の計測に拡張期が含まれることで、拡張能の影響を受けてしまうだけでなく、圧測定を血管圧の測定で代用できなくなる不利がある。我々は新たなより純粋な心収縮力指標として、拡張末期容積-収縮期心室仕事量の関係(PRSSW)の傾き(Ssw)を考案し、その特性をMswやEesと比較した。【方法】14匹の成犬にセンサーを埋め込み、左心室圧距離関係の計測を行い、様々な負荷状態で下大静脈閉塞を行いEes、Msw、Sswを求めた。また同一条件下で同じ指標を2回測定し、指標の信頼性(級内相関係数)と再現性(誤差の範囲)について評価した。【結果】ESPVR、PRSW関係、PRSSW関係の相関係数はそれぞれr=0.94、0.97、0.98とPRSSWにおいて特に高い直線性を認めた。それぞれの傾きの変動範囲はEes(5.5-26mmHg/ml)、Msw(16-122mmHg)、Ssw(31-116mmHg)であった。Ees、Msw、Sswは陰性コントロールである心室ペーシングにおいて+44±58%、+13±8%、+8±4%の変動を示し、陽性コントロールであるドブタミン10γ投与で+35±26%、+28±10%、+23±10%、頻拍誘発性心不全では-11±18%、-54±20%、-38±18%の変動を示した。信頼性と再現性の評価において、Ees、Msw、Sswの級内相関係数は0.92、0.98、0.97、誤差の範囲は±33.5%、±14.2%、±12.5%であった。MswとSswはいずれも心室拡張期stiffnessと有意な逆相関(r=-0.49, p<0.01, r=0.44, p=0.01)を認めたが、MswとSswの差もstiffnessと有意な相関を認めた(r=0.48, p<0.01)。【結論】SswはMswに比べ拡張能の影響を受けにくく、少なくともMswと同等の直線性、信頼性、再現性、及び心室収縮力変化の検出力を有している。SswはMswより簡便な心機能評価の新たな枠組みとなる可能性がある。