[I-OR09-02] 圧波形解析による右室拡張能のシミュレーション -RelaxationとElastic recoilの識別と可視化-
キーワード:右室, 拡張能, Presure Phase Plane
【背景】時定数(Exponential time constant; τ)は心室弛緩能評価のGold standardと認識されている。しかし、τは実測した左室拡張期圧に対する近似値であり、右室心筋の生理学的機能評価に則した指標ではないなどの問題もある。Pressure Phase Plane(PPP)はX軸を右室圧(P)、Y軸をdP/dtとして1心周期を1ループで表現した位相面解析である。PPPの等容性拡張期の接線の傾きは-1/τ であり、Cross-bridging deactivationによるRelaxationを示し、dP/dt_minにおける曲率は収縮した心室壁によるElastic recoilを示すことを用いて右室拡張能をRelaxationとElastic recoil のcomponentに区別して評価できる。 【目的】PPPを用いた右室弛緩の病態評価の有用性について検証する。【方法】肺動脈性肺高血圧(PH群) 6例、心房中隔欠損(ASD群) 8例、ファロー四徴症術後(TOF群) 25例、右室負荷の無いControl群 25例を対象とした。【結果】右室等容性拡張期のPPP波形は、Round, Linear, 1-hump, 2-humpの4型に分類できた。RoundはRelaxation、Elastic recoilともに良好、1-hump, Linearは各々Elastic recoilが軽度もしくは重度に低下、2-humpは心筋Stiffnessの増悪とrelaxationの悪化を示す。Control群では全てRoundであったが、PH群、TOF群では右室弛緩能低下やElastic recoilの低下、Stiffnessの増悪を反映するLinearや1-hump, 2-humpの形態が多く認められた。等容性拡張期における接線の適合性を検討するためにNormalized RMSを算出した。右室では左室に比較して有意に大きく(0.16±0.08 vs 0.06±0.03;p<0.01)、τによる弛緩能評価には問題があることが示された。【結語】PPPは右室弛緩をCross-bridging deactivationとElastic recoil に識別して具体的・直接的に評価することに有用である。また、右室拡張能評価において時定数をGold standardとすることは適切ではないと考えられた。