[I-OR09-05] フォンタン関連肝障害におけるStructural and functional uncouplingのメカニズム
Keywords:フォンタン, 肝障害, 肝機能
【背景】フォンタン関連肝障害では肝線維化指標と機能の間に不整合がある (Structural-Functional uncoupling)ことが報告されてきたが、そのメカニズムは不明である。ICGを用いた肝機能評価は肝血流量に影響を受けることが知られており、FALDの形成過程で生じる門脈体循環短絡と肝血流供給の動脈血化がこの病態に関わっている可能性がある。【方法】フォンタン術後遠隔期カテーテル検査時(10.9±4.6歳)にICG消失率とICG15を採血法により実測し、血行動態指標、肝血流供給動脈化指標、門脈体循環短絡指標との関連を解析した。【結果】フォンタン遠隔期のICG消失率kは0.11±0.04、ICG15は15.6±7.5%であった。ICG消失率、ICG15ともに中心静脈圧、肝静脈楔入圧、心拍出量、平均血圧、血管抵抗と関連しなかった。肝障害に伴う肝血流供給源の門脈支配から動脈支配へのシフトを反映すると考えられる肝静脈-下大静脈酸素飽和度比はICG消失率と負相関を認めた(p=0.033)が、門脈体循環短絡を反映するアンモニアや血清マンガンとの関連はなかった。一方、ICG15は血清マンガンと強い正相関を認め(R2=0.40, p=0.0082)、門脈体循環短絡により高値を示す可能性が示唆された。肝線維化マーカーとの関連ではICG消失率がIII型プロコラーゲンと負相関を示し(p=0.033)、ANCOVAにより年齢を調整してもIII型およびIV型プロコラーゲン7sと強い関連が認められた(p<0.05)。【結論】学齢期フォンタン症例では肝線維化-機能連関不整合は明らかでなく、線維化に伴いICG排泄率低下と肝血流供給の動脈血化が並行して進行する病態が示された。ICG15は末梢血管抵抗の変化や循環血漿量に影響をうける門脈体循環短絡指標と関連し、純粋な肝機能指標としてよりもフォンタン循環全体を俯瞰したFALDの指標として有用な可能性がある。