第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

電気生理学・不整脈

一般口演11(I-OR11)
電気生理学・不整脈 II

2022年7月21日(木) 15:10 〜 16:00 第7会場 (ルーム204)

座長:豊原 啓子(東京女子医科大学 循環器小児科)
座長:安田 東始哲(やすだクリニック小児科・内科 小児科)

[I-OR11-02] WPW症候群の薬剤負荷による診療構築

古河 賢太郎, 橘高 恵美, 吉田 賢司, 西岡 真樹子, 百木 恒太, 大越 陽一, 河内 貞貴, 星野 健司 (埼玉県立小児医療センター)

キーワード:WPW症候群, FVP, 薬物負荷

【背景】WPW症候群の多くは無症候性だが突然死リスクがあり,初回発作が突然死の場合もあるため適切な診断と管理が必要となる.一方で束枝-心室副伝導路(FVP)もΔ波を認めるがリスクは無い.ATP負荷は両者の鑑別が可能で,アミサリン負荷でのΔ波消失は不応期が長い場合が多く,頻拍発作時の危険性が低いと判断され管理方針決定に有用となる.【対象・方法】WPW症候群の診断で当院受診し,Δ波を認めた132人を対象,期間は2008/4~2021/12で後方視的に検討した.洞調律時にATPを投与し,PR時間が変化せずQRSが変化した場合にWPW症候群,QRS脱落かQRSが変化せずPR時間が延長した場合にFVPと診断した.アミサリン負荷はWPW症候群,判定不能例に行いΔ波消失の有無を判定し,トレッドミル検査と比較した.喘息既往,抗不整脈薬内服,心奇形症例など除外した.【結果】132人(男69人)で中央値がそれぞれ12.7歳,HR 75bpm,PR 110ms,QRS 102msだった.ATP負荷でFVP 65例,WPW症候群 57例,判定不能 10例で,判定不能は洞機能抑制が最も多かった.12歳以下(52人)/以上(70人)に分けWPW/FVP群で比較したが性別/年齢/心拍数/PR時間/ATP量で有意差は無かった.アミサリン負荷でWPW症候群の52%でΔ波消失した.いずれの負荷も副作用無く,全例外来で施行した.トレッドミル検査は判定不能例が多く不確実であった.【考察】頻拍発作の無いWPW症候群は外来で経過観察されるが,Δ波を認めるFVPも同様に扱われる事が多い.本検討でΔ波例の半数がFVPで,ATP負荷は頻拍発作の予測や不要な受診を減らす有用な検査と考えられた.アミサリンでのΔ波消失は定期外来のみで良く,Δ波残存は不応期が短い可能性があり予防的Ablationなども今後検討が必要となる.【結論】ATP負荷でFVPと診断されれば定期受診が不要となり,アミサリン負荷は頻拍発作時の危険性を予想出来る可能性があり,いずれも安全性・簡便性からも有用な検査と考えられた.