[I-OR12-01] 術後声帯麻痺診断における頸部エコースクリーニングの有用性
キーワード:声帯麻痺, 反回神経麻痺, 頸部エコー
【背景・目的】術後声帯麻痺(VCD)の診断において頸部エコーの有用性を示す報告が散見されるが未だ十分に検証されていない.頸部エコーによるスクリーニングの有用性を検証する.【方法】2009年から2021年までに施行した1歳未満の心臓手術999症例を対象とした.2019年6月以前(Era1, n=755)は有症状例(嗄声,嚥下障害等)に対し耳鼻科医が喉頭鏡で直接声帯を確認し診断した.2019年7月以降(Era2, n=244)はVCPのリスクが高い症例(新生児症例,大動脈再建手術)に対し症状の有無にかかわらず頸部エコーによるスクリーニングを開始し(対象者49例),積極的にVCPの診断を行った.年代別に診断率の変化を検証するとともに,喉頭鏡検査結果と比較し頸部エコー診断精度を検証した.【結果】VCDを認めた症例は全体で47例(4.7%)であった.Era1,Era2を比較すると,手術時年齢(3.3カ月vs. 3.3カ月, p=0.82),体重(4.1kg vs.4.0k g, p=0.52),診断,術式の比率に有意差は認めなかったが,VCDの頻度は25例(3.3%) vs. 22例(9.0%)と有意に上昇した(p<0.001).特に大動脈弓再建術を含む手術群(IAA/CoA repair (23 . 3% vs. 50.0%, p=0.04), Norwood operation (0% vs. 57.1%, p=0.007)では半数を超える症例でVCDの診断となり有意に診断率が上昇した.VCDリスク因子として手術時年齢(p<0.001),体重(p=0.06),手術時間(p<0.001),人工心肺使用(p=0.01),arch repair(p<0.0001), PDA手術(p=0.02),Era2(p<0.001)が上げられた.頸部エコーは2019年7月以降49例で施行した.耳鼻科で喉頭鏡検査による直接確認と比較した診断精度は感度88%(22/25),特異度92%(22/24)であった.【結語】Era1ではVCDの発生頻度が過小評価されていた可能性が示唆された.頸部エコーはVCPスクリーニング検査として有用であり,診断率向上の一助となりえると思われた.遠隔期における声帯機能評価にも応用することでより低侵襲にVCPの遠隔予後の実態把握につながる可能性が示唆された.