[I-OR12-05] グレン手術の周術期管理における一酸化窒素吸入療法の有用性の検討
Keywords:グレン手術, 肺高血圧, フォンタン手術
【背景】我が国において一酸化窒素(NO)吸入療法は、2015年に「心臓手術の周術期における肺高血圧の改善」が保険適用となり、小児循環器領域での積極的な導入が行われている。今回我々は、グレン手術の周術期管理におけるNO吸入療法の有用性を後方視的に検討した。【方法】2011年から2020年の間に北里大学病院でグレン手術を施行した症例を対象とした。グレン手術を施行した時期によって、A群(2011~15年、n=12)、B群(2016~20年、n=11)の2群に分類し、周術期経過の比較を行った。【結果】A群とB群を比較して、グレン手術時の年齢(6.1±5.2 vs. 4.7±1.0か月, p=0.38)、グレン手術前の平均肺動脈圧(15±3 vs. 14±2 mmHg, p=0.20)、肺血管抵抗係数(1.5±0.7 vs. 1.3±0.8Wood単位・m2, p=0.07)に有意差は認めなかった。グレン手術後のNO吸入療法は、A群で1例(8%)、B群で7例(64%)に施行された。グレン手術後の小児集中治療室(PICU)在室日数はA群と比較してB群が有意に短かった(7.3±3.4 vs. 4.9±1.5日, p<0.05)が、気管挿管日数(1.8±4.0 vs. 0.6±0.9日, p=0.48)、ドレーン留置日数(5.3±3.5 vs. 4.3±1.6日, p=0.36)、および入院日数(42.8±43.9 vs. 32.2±26.8日, p=0.45)は両群間で有意差を認めなかった。両群ともに術後死亡、NO吸入療法に伴う副作用は認めなかったが、A群で1例(8%)フォンタン手術に到達できなかった。【結論】グレン手術後にNO吸入療法を導入する症例は増加傾向にあり、PICU在室日数の短縮に寄与する可能性がある。今後はNO吸入療法の適正な症例選択と、フォンタン手術に至る過程に与える長期的な影響に関する検討が必要である。