[I-P1-1-01] 長野県における総肺静脈還流異常症の診断・転帰についての検討から考える胎児診断の意義
キーワード:総肺静脈還流異常, 肺静脈狭窄, 胎児診断
【背景】総肺静脈還流異常症(TAPVC)は、長野県において未だ胎児診断率の低い疾患の1つである。特に肺静脈狭窄(PVO)を来している症例は、出生後重篤なチアノーゼを契機に緊急搬送される症例も多いが、ここ数年胎児診断される症例が散見されるようになった。【目的】TAPVCの予後を検証し、胎児診断の意義を明らかにすること。【対象と方法】2012年1月~2022年1月の期間で当院に入院もしくは胎児診断したTAPVC30例(内臓錯位症候群合併を除く)のうち、当院以外で手術を受けた2例と多発奇形症候群を伴う2例を除いた26例を対象とし、情報を後方視的に診療録から調査した。【結果】胎児診断されていたのはわずか3例であった。全体では診断時PVOありが11例(生存率73%)、なしが15例(生存率87%)で、PVOありの方が生存率は低かった。生存症例を診断時PVOの有無で比較すると、人工呼吸管理日数はPVOありの症例で8.6±3日、なしの症例で6.9±10日と有意差を認めた。PVOありの症例で胎児診断群と非診断群の手術開始時間を比較すると、胎児診断群では出生から4±2時間、非診断群では出生から22±18時間であり、有意差を認めた。胎児診断群は3例全例PVOを認めていたが、1例はPVOの確診には至っておらず出生後に準備を始めたため、介入がやや遅くなった。この症例は術後低心機能でECMO管理となりその後死亡した。胎児診断されていないPVOの症例では出生7時間、10時間で介入となった症例が死亡していた。【考察】TAPVCにPVOを合併していると生存率は低くなる。当院は長野県全域をカバーしており、出生後の診断では介入が遅くなってしまう症例が多い。特にPVOを合併している症例は早期介入の方が予後をよくする可能性があり、まだ症例が少ないため比較は困難だが早期介入ができるという意味で胎児診断が重要と考える。【結語】TAPVCの胎児診断においては本症そのものの診断に加えてPVOの有無について診断することが重要である。