[I-P1-1-06] 多職種連携により出生後直ちにStarnes手術を施行し救命できた重症Ebstein病の一例
Keywords:多職種連携, 胎児診断, Ebstein病
【背景】重症Ebstein病は胎児・新生児期に心不全を呈し救命が困難な例も多い。循環動態が不安定な状況で出生直後に緊急手術にたどり着くには困難が伴う。【症例】胎児心拡大のため当院に紹介され、在胎30週の胎児心エコーでcircular shuntを呈するEbstein病と診断された。CTAR 56%、Celermajer index 0.89、三尖弁逆流速度は2.0m/sであり、小児循環器科と心臓血管外科の協議で、可能な限り成熟を待ち生後早期のStarnes手術の方針とし、家族へは子宮内胎児死亡の可能性も説明しながら、慎重に経過観察を行った。胎児水腫には進展しなかったが、在胎37週0日に遅発一過性徐脈のため緊急入院した。CTAR 69% 、Celermajer index 1.61(grade4)と最重症であり、小児循環器科、心臓血管外科、産婦人科、新生児科、麻酔科、助産師、手術室・PICU看護師、臨床工学技士による多職種カンファレンスを実施した。分娩様式は帝王切開とし、分娩室にPGE1製剤とNO吸入回路を準備し、必要時には隣室の手術室で直ちに開心術へ移行する方針を共有した。児は在胎37週2日に帝王切開で出生体重2,188gで出生した。新生児科医により蘇生され、NO吸入、PGE1製剤使用下でも徐脈と低酸素血症が遷延するため、生後48分に隣室へ移動し、生後2時間にはStarnes手術、ASD拡大術、右房形成、肺動脈切離、動脈管閉鎖、mBTシャント造設術を開始した。術後経過はおおむね良好で日齢59に退院し、現在はBDG手術まで到達し、TCPC待機中である。【考察】出生前の多職種カンファランスにより産科医による帝王切開、新生児科医による蘇生、小児循環科医による診断、心臓血管外科医による手術と手順や役割分担を明確にし、麻酔科医、手術室・PICU看護師とも事前に情報共有できていたことが予後に大きく寄与したと考えられた。【まとめ】胎児診断を基に多職種カンファレンスを行い、重症Ebstein病の児に出生直後のStarnes手術を施行し救命しえた。