[I-P1-1-08] 母体COVID19を合併した抗SS-A抗体陽性の完全房室ブロックの一例
Keywords:完全房室ブロック, 胎児診断, COVID19
【緒言】抗SS-A抗体陽性妊婦に合併した先天性完全房室ブロック(CCAVB)は,心拍数が55bpm未満,胎児水腫,診断時週数20週未満,左心機能障害などが胎児死亡リスクとされるが,定まった妊娠管理指針は未だない.今回,抗SS-A抗体陽性のCCAVB胎児の母体が新型コロナウイルス感染症(COVID19)を発症し,胎児の心機能に影響を及ぼしたと考える症例を経験した.【症例】1経産(妊娠高血圧症候群のため早産,心疾患なし).妊娠22週で胎児徐脈を指摘され,初めて母体は抗SS-A抗体高値のシェーグレン症候群と診断された.妊娠23週で,心室心拍数 59-60 bpm,CTAR 38%,心嚢水貯留,房室弁逆流中等度を認めた.胎児心拍増加目的に母体塩酸リトドリン投与および母体デキサメサゾン(DEX)投与を開始した.心嚢水貯留は遷延したものの,心室心拍数は60bpm前後を維持,胎児心機能は著変なく推移し,胎児推定体重も増加を得られた.妊娠26週に母体がCOVID19(中等症I; 胸部CTで軽度肺炎像)を発症した.DEX投与中・妊娠中後期の重症化リスク因子があり,カシリビマブ/イムデビマブを投与された.隔離病棟のため十分な評価が困難だったが,胎児心拍は50-60bpmで推移.COVID19発症10日で退院後,胎動減少および心室心拍数 40 bpmへ減少していた.娩出も考慮されたが,妊娠28週と早産・推定体重1000g未満であり,胎内管理継続とした.心室心拍数は40bpm台で推移したが,胎児発育なく羊水減少・心拡大(CTAR 56%)を認め,妊娠31週に胎児死亡となった.【結語】今回,母体COVID19発症がCCAVB胎児の心機能に影響したと考える症例を経験した.COVID19において直接的な経胎盤的感染については証明されておらず,母体の炎症や胎盤への血行動態などの要因の可能性がある.胎児先天性心疾患におけるハイリスク症例において,母体COVID19感染および母体合併症は少なからず影響を及ぼす可能性があり,より慎重な管理が必要である.