[I-P1-2-01] 肺動脈狭窄を合併するチアノーゼ性心疾患における肺動脈連続波ドプラ最大流速時間解析の有用性
キーワード:肺動脈狭窄, 連続波ドプラ, 体肺動脈短絡術
【背景】 肺動脈狭窄を合併するチアノーゼ性疾患では、しばしば乳児期に弁下部狭窄が増強し、低酸素血症の進行により体肺動脈短絡術が必要となる。一方で、体肺動脈短絡術の必要性を事前に予測することは困難な場合がある。【目的】 肺動脈狭窄を合併するチアノーゼ性心疾患において、体肺動脈短絡術を要した症例と乳児期前期の肺動脈連続波ドプラ法計測値の関連を検証する。【方法】 2011年~2020年に当院で管理した肺動脈狭窄(連続波ドプラで3m/s以上)を合併するチアノーゼ性心疾患患者56例を対象とした。肺高血圧と関連するDown症候群などの先天異常例や動脈管依存心疾患例は除外した。姑息的に体肺動脈短絡術を要した群(S群)と体肺動脈短絡術を要さなかった群(NS群)に分けて、生後6か月以内(生後14日以内を除く、S群は短絡術術前)に計測した血液検査値、SpO2、心臓超音波検査計測値を比較検討した。【結果】 S群が35例、NS群が21例であった。S群で体肺動脈短絡術を施行した日齢は154.5±105.0であり、無酸素発作を7例 (20 %) に認めた。S群でHbは有意に高く(S群: 13.7±1.8 g/dL, NS群: 12.6±1.8 g/dL, p=0.03)、安静時SpO2は有意に低かった(S群: 84.8±8.3 %, NS群: 89.4±5.7 % p=0.03)。肺動脈index、肺動脈弁輪径z-score、肺動脈弁2尖弁の有無、肺動脈連続波ドプラ法の最大流速に有意差はなかった。肺動脈最大流速時間/右心室駆出時間 (PST/ET) はS群で有意に高値だったが(S群: 0.56±0.10, NS群: 0.39±0.07, p<0.01)、ETは両群で有意差を認めなかった。多変量解析では、PST/ETがS群の独立した予測因子であった (odds ratio 1.27, p<0.01) 。【考案・結語】 S群では肺動脈連続波ドプラ波形のピークが収縮後期に移行しており、低酸素血症進行の誘因となる弁下筋性部狭窄が主体である症例が多いことを示していた。心臓超音波検査のPST/ET高値は、体肺動脈短絡術の必要性を予測する因子として有用である。