第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

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ポスター発表

画像診断

ポスター発表(I-P1-2)
画像診断 I

2022年7月21日(木) 14:00 〜 15:00 ポスター会場

座長:石川 友一(福岡市立こども病院 循環器科)
座長:布施 茂登(NTT東日本札幌病院 臨床検査科)

[I-P1-2-06] 心房中隔欠損症における心エコーの右室径スコアを用いた肺体血流比の非侵襲的予測

住友 直文1,2, 淺野 聡1, 湯浅 絵理佳1, 井上 忠1, 山本 一希1, 小柳 喬幸1, 古道 一樹1, 前田 潤2, 三浦 大2, 山岸 敬幸1 (1.慶應義塾大学 医学部 小児科学教室, 2.東京都立小児総合医療センター)

キーワード:Zスコア, 心房中隔欠損症, 肺体血流比

【背景】心房中隔欠損症(ASD)を有する小児において, 肺体血流比と右心系拡大の程度との正確な関係性は知られていない.
【目的】ASD児における心臓カテーテル検査(CC)の肺体血流比(cQp/Qs)と, 経胸壁心エコー検査(TTE)の右心系計測値Zスコアとの間の相関性を検討する.
【方法】2013年-2020年に当院でCCを行った他の心疾患及び染色体異常のないASD 175症例(中央年齢6.8歳, 0.7-18.5歳, 男児68名)を後方視的に解析した. CC直近のTTE画像を用いて, 以下項目を計測した; 右室拡張末期基部径(RVB), 中部径(RVM)及び拡張末期長(RVL), 右房長径, 短径(以上四腔像), 三尖弁輪径(四腔像, 傍胸骨像)及び弁口面積, 主肺動脈径(大血管基部短軸像). 各計測値をZスコアに変換し, cQp/Qsとの相関性を検討した.
【結果】ASDの内訳は二次孔型170例, 一次孔型3例, 静脈洞型と冠静脈洞型それぞれ1例だった. 19名に肺高血圧(平均肺動脈圧20mmHg以上)を認めたが, いずれも軽症(右室/左室圧比0.5以下或いは肺血管抵抗/体血管抵抗比1/3未満)だった. RVB, RVM, RVLのZスコアとcQp/Qsとの間には, それぞれ正の相関が見られた(RVB: r = 0.54; RVM: r = 0.57; RVL: r = 0.52). 更に, これら3つのZスコアの平均値(ARV)とcQp/Qsの間に最も高い正の相関が認められた(r = 0.63). cQp/Qs≧1.5を予測するためのARVカットオフ値は+2.0だった(AUC: 0.85; 感度: 76.8%; 特異度: 82.4%). 右室径以外の計測値のZスコアとcQp/Qsの相関性は低値だった(r = 0.24-0.48).
【考察】右心系計測値の中で, 右室径はASD症例の肺血流増加による容量負荷を直接反映していると考えられた. また, 右室が拡大する方向は症例毎に異なり, 単一方向の右室計測値よりも, 複数方向の平均値を用いた方が, より正確に容量負荷を反映すると考えられた.
【結論】ASD症例のARVはcQp/Qsと高い相関性を示すため, 有意な左右短絡を非侵襲的に予測し, 手術適応の決定に応用可能な指標である.