The 58th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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ポスター発表

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

ポスター発表(I-P1-4)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患 I

Thu. Jul 21, 2022 2:00 PM - 3:00 PM ポスター会場

座長:澤田 博文(三重大学大学院 小児科)
座長:星野 健司(埼玉県立小児医療センター 循環器科)

[I-P1-4-09] 麻酔管理に難渋した重症特発性肺動脈性肺高血圧症の幼児例

升森 智香子, 長田 洋資, 渡邊 康大, 紺野 愛, 中野 茉莉恵, 桜井 研三, 麻生 健太郎 (聖マリアンナ医科大学病院 小児科)

Keywords:特発性肺動脈性肺高血圧症, 小児, 心臓カテーテル検査

【背景】小児の特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)は初発症状が非特異的で気づかれにくく,診断時には重症であることが多い.肺高血圧症の確定診断のために右心カテーテル検査が推奨されるが,重症なほど,周術期の心血管合併症のリスクが高い.今回3歳で発症し,カテーテル検査時に肺高血圧クリーゼ(PHC)を生じた重症I P A H症例を経験したので報告する.【症例】3歳男児.来院2週前から感冒症状を認め,その後活気低下,歩きたがらない等の症状と,起坐呼吸を認め当院紹介受診.右心負荷所見著明(右心拡大,TRsevere4.2m/s,TAPSE4.6mm,心嚢水貯留,NT-proBNP24642ng/L)であり,肺高血圧症として入院となった.入院翌日の診断カテーテルの際,麻酔導入し挿管後,Tidal volume保持されるも,EtCO2低値であり換気量を下げ換気を行なった.数分後,脈拍触知不良,徐脈となりPHCを生じた.volume負荷,ボスミン,NO吸入下でのhyper ventilationで血圧回復したが,検査は断念した.その後も鎮静継続し,ドブタミン,酸素,NO吸入,シルデナフィル,エポプロステノール,ボセンタンを順次併用投与し,肺高血圧の管理を行なった.入院12日目には右心負荷所見改善(TR2.1m/s,TAPSE16.6mm,心嚢水消失)し,抜管した.エポプロステノールは漸減しセレキシパグ内服へ移行した.酸素投与と血管拡張薬3剤併用にて肺高血圧症は軽快(NT-proBNP214ng/L)し,入院56日目に退院した.【考察】IPAHは早期発見早期診断が不可欠であるが,非特異的な初発症状が多く,小児例の場合は症状を把握することが困難である.また周術期の高CO2血症,低酸素症,気道器具などの刺激は,急速な肺血管抵抗の上昇を生じ,重症PAHほどPHCリスクが高い.重症心不全患者は治療を優先しカテーテル検査の延期も検討するべきである.また肺血流減少例はEtCo2がPaCO2と解離し換気状態の指標とならず注意が必要である.麻酔科医と事前に患者の臨床情報を共有し,手順を慎重に計画する事がP H C発症予防につながる.