[I-P1-4-10] 肺高血圧の新しい機序:肺炎に伴う組織変化とリンパ節腫大による肺静脈圧迫
Keywords:肺静脈狭窄, リンパ節腫大, 肺炎
【はじめに】機械的圧迫による肺静脈狭窄(PVO)は肺高血圧(PH)の原因となる.肺炎に伴う組織変化とリンパ節腫大による圧迫という,従来報告がない機序でのPVO例を経験した.
【症例】在胎38週5日,体重2440gで出生.哺乳不良と低酸素血症を主訴に日齢5に当院に紹介され,21 trisomy,完全房室中隔欠損(CAVSD), 動脈管開存(PDA)と診断された.高肺血流に対し日齢24に肺動脈絞扼術(PAB)+動脈管結紮術が施行され,月齢2に退院した.PHが進行し,在宅酸素吸入療法を導入した.サイトメガロウイルス肝炎で入院し,誤嚥性肺炎のため経管栄養にした.月齢3のCT像で両側無気肺と左側PVOが認められ,再PAB施行後,月齢4に退院した.月齢5にアデノウイルス感染で入院し,呼吸不全のため在宅管理が困難になった.月齢6のCT像では肺炎と肺うっ血が悪化し,鎮静下の人工呼吸管理に切り替えた.月齢7のCT像でブラ・無気肺が増悪し,気管切開下に人工呼吸管理を続けたが,肺出血をきたし高圧設定の呼吸管理を要した.その後間質性肺炎に陥り,ステロイド投与で一時的に改善したが,月齢8に肺出血が増悪した.尿路感染症を契機に呼吸不全はさらに悪化し,敗血症から循環不全に陥った.月齢9に左緊張性気胸から心停止に陥り,緊急ドレナージ・蘇生をくり返した後,死亡した.病理解剖の肉眼的観察で, 左上葉の著明なブラと両肺組織の硬化を認めた.外観上肺静脈は狭小でなく,著明に腫大した周囲リンパ節群に圧迫されたと考えられた.顕微鏡的観察では,持続する炎症が原因と考えられる肺静脈壁肥厚と内腔の狭窄化を認めたが一部血管にとどまっていた.
【まとめ】本症例では,潜在的な肺組織異常,手術に伴う癒着,持続する肺炎,くり返す感染症,長期の人工呼吸管理,ステロイド使用などの影響がベースにあり,炎症に伴う肺静脈壁の組織変化が加わり,リンパ節腫大による機械的圧迫が直接的な機序となってPVOをきたしたと考えられた.
【症例】在胎38週5日,体重2440gで出生.哺乳不良と低酸素血症を主訴に日齢5に当院に紹介され,21 trisomy,完全房室中隔欠損(CAVSD), 動脈管開存(PDA)と診断された.高肺血流に対し日齢24に肺動脈絞扼術(PAB)+動脈管結紮術が施行され,月齢2に退院した.PHが進行し,在宅酸素吸入療法を導入した.サイトメガロウイルス肝炎で入院し,誤嚥性肺炎のため経管栄養にした.月齢3のCT像で両側無気肺と左側PVOが認められ,再PAB施行後,月齢4に退院した.月齢5にアデノウイルス感染で入院し,呼吸不全のため在宅管理が困難になった.月齢6のCT像では肺炎と肺うっ血が悪化し,鎮静下の人工呼吸管理に切り替えた.月齢7のCT像でブラ・無気肺が増悪し,気管切開下に人工呼吸管理を続けたが,肺出血をきたし高圧設定の呼吸管理を要した.その後間質性肺炎に陥り,ステロイド投与で一時的に改善したが,月齢8に肺出血が増悪した.尿路感染症を契機に呼吸不全はさらに悪化し,敗血症から循環不全に陥った.月齢9に左緊張性気胸から心停止に陥り,緊急ドレナージ・蘇生をくり返した後,死亡した.病理解剖の肉眼的観察で, 左上葉の著明なブラと両肺組織の硬化を認めた.外観上肺静脈は狭小でなく,著明に腫大した周囲リンパ節群に圧迫されたと考えられた.顕微鏡的観察では,持続する炎症が原因と考えられる肺静脈壁肥厚と内腔の狭窄化を認めたが一部血管にとどまっていた.
【まとめ】本症例では,潜在的な肺組織異常,手術に伴う癒着,持続する肺炎,くり返す感染症,長期の人工呼吸管理,ステロイド使用などの影響がベースにあり,炎症に伴う肺静脈壁の組織変化が加わり,リンパ節腫大による機械的圧迫が直接的な機序となってPVOをきたしたと考えられた.