The 58th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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ポスター発表

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

ポスター発表(I-P1-4)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患 I

Thu. Jul 21, 2022 2:00 PM - 3:00 PM ポスター会場

座長:澤田 博文(三重大学大学院 小児科)
座長:星野 健司(埼玉県立小児医療センター 循環器科)

[I-P1-4-12] 小児期発症の特発性肺動脈性肺高血圧症におけるエポプロステノールからトレプロスチニルへの薬剤変更の経験

加藤 真理子, 藤井 隆成, 長岡 孝太, 清水 武, 大山 伸雄, 佐野 俊和, 堀尾 直裕, 喜瀬 広亮, 宮原 義典, 富田 英, 佐野 俊二 (昭和大学病院 小児循環器・成人先天性心疾患センター)

Keywords:特発性肺動脈性肺高血圧症, トレプロスチニル, 薬剤変更

【背景】特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)に対し, 高用量のエポプロステノールを使用した場合, 血小板減少をはじめとした有害事象が問題となる. トレプロスチニルへの薬剤変更が有効であるという報告が散見されるが, 小児期発症例に対する報告は少ない.
【症例】18歳女性. 14歳で発症. 初診時, 失神を認め, WHO機能分類III, 経胸壁心エコーでの推定右室圧は100mmHgであった.IPAHの診断で, upfront combination therapyとして, タダラフィルとアンブリセンタンを開始し, 発症から半年後にエポプロステノールを導入した. 導入前の心臓カテーテル検査では, 平均肺動脈圧50mmHg, 肺血管抵抗9.9Wood unit・m2 であった. 重症度, 年齢からエポプロステノールを積極的に増量する方針とした. 発症約2年半で83ng/kg/minまで増量し, 平均肺動脈圧32mmHgまで低下したが, 血小板減少の副作用が出現し増量を中止した. 開始から4年経過し, 血小板1.5万/μlまで低下し出血傾向が出現したため, 成人での報告を参考に, トレプロスチニルへの薬剤変更を行う方針とした. トレプロスチニルの目標投与量は, エポプロステノール投与量の130%(112ng/kg/min)と設定した. トレプロスチニルを目標量の10-15%/日のペースで漸増, エポプロステノールは10%/日で減量し, 10日間で変更を完了した. 薬剤変更前後で肺動脈圧の増悪は認めず, 血行動態も安定していた. 薬剤変更2か月後から血小板数の改善がみられ, 最終的に血小板11万/μlまで上昇し出血傾向も消失した. 有害事象として, 薬剤変更4日目から四肢痛が生じた. 徐々に増悪し疼痛管理に難渋したが, 時間経過とともに改善を認め, 変更から約3ヶ月で消失した.
【結論】小児期発症のIPAH患者においても, エポプロステノールからトレプロスチニルへの薬剤変更は安全に施行可能であった. 有害事象として四肢痛の管理に留意が必要である.