第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

外科治療

ポスター発表(I-P1-6)
外科治療 I

2022年7月21日(木) 14:00 〜 15:00 ポスター会場

座長:小沼 武司(長野県立こども病院 心臓血管外科)
座長:芳村 直樹(富山大学 第1外科)

[I-P1-6-07] 共通肺静脈が低形成のTAPVC(3)に対し, 心房内アプローチでsutureless法を行った1例

中村 真1, 菅野 勝義1, 西岡 雅彦1, 加藤 昭生2, 西畑 昌大2, 島袋 篤哉2, 北野 正尚2, 佐藤 誠一2 (1.沖縄県立南部医療センター・こども医療センター 小児心臓血管外科, 2.沖縄県立南部医療センター・こども医療センター 小児循環器科)

キーワード:総肺静脈還流異常, 外科治療, 新生児

【背景】TAPVCは症例に応じてPV形態が多様であり, LAとの位置関係により広い吻合径を得るための工夫を要する.【症例】在胎40週5日, 2995gで出生. 出生後SpO2 80%台であり, 当院搬送後, TAPVC(3)の診断. 共通肺静脈(CPV)は低形成, 右肺静脈は肺内で1本に合流し, 長い共通管をなす. 左肺静脈は上下で認め, 短い共通管となり右肺静脈とIVCーRA junction背側で合流し, 尾側でdescending vein(DV)が形成. SpO2は挿管下で75-80%(FiO2 0.21). Severe PVOに至らないが, 狭小LV, LAであり, 右腕頭動脈まで逆行性血流が見られた. 日齢7に順行性血流の改善をみて手術を実施. 心停止後, 右房を切開し心房中隔一次膜を切除. DVを結紮後, 心膜上から左上肺静脈を切開. 各々のPVの枝およびDVを切開し, 10 mmの開口部を確保. 右房切開を心房中隔まで延長し, 左心耳基部まで広く左房壁を切開. 心房側よりPV切開部辺縁の心膜と縫合. また, 右肺静脈切開右側で上下の心房壁を縫合し肺静脈ー左房の吻合を完成. 心房中隔欠損部は心膜パッチを用いて閉鎖. 遮断解除後, 心肺離脱を試みたが肺出血に伴う換気不全のためVーA ECMOで帰室. 手術時間4時間43分, 心停止時間68分. 当日にECMOは離脱, 術後5日目に二期的閉胸. 退院時のエコー検査で吻合部径は5.3 x 6.2 mm, 圧差2 mmHgで狭窄は認めず, 術後20日目に合併症なく退院した.【考察】本症例はCPVが低形成で3本のPVおよびDVに切れ込みを入れ, 十字状の吻合口を作成しその周囲の心膜と左房を縫合することで十分な開口径を得た. 四方向の静脈の走行に対し右房切開線を心房中隔まで延長したことにより, 同一視野で静脈吻合口周囲の心膜との縫合が可能となった. 加えて, 吻合時に心房・心室の心外での展開を要さず, 吻合部に過度な緊張・緩みを生じにくいと考えられ, 症例に応じて本術式を行うことは有用と考えられる.【結語】TAPVC(3)に対し心房内アプローチでsutureless法を行い, 良好な結果を得た.