[I-P1-6-08] 成人期に手術介入を行った非典型的な部分肺静脈還流異常症の2例
キーワード:成人先天性, 部分肺静脈還流異常症, 手術
【背景】部分肺静脈還流異常症は比較的まれな心疾患であり、その発生率は全出生の0.4-0.7%とされている。右上(+中)葉枝-上大静脈への還流異常が典型的であるが様々な病型が知られており、高率に心房中隔欠損の合併を認めることが知られている。今回我々は成人期に手術介入を要した心房中隔欠損を伴わない部分肺静脈還流異常症の2例を経験したので報告する。【症例1】39歳男性。運動耐容能の低下を自覚し精査の結果、左上中肺静脈が腕頭静脈へ還流する部分肺静脈還流異常症と診断された。心内病変なし。体外循環/心停止下に左上中肺静脈共通管を腕頭静脈と離断。左肺静脈をさらに剥離受動し左心耳と直接吻合で還流路を作成した。術後経過は問題なく術後15日で自宅退院した。術後画像評価では吻合部はやや長軸方向に伸展する力がかかっており引き延ばされた形態となっているが明らかな圧上昇や加速は認めていない。【症例2】60歳女性。運動耐容能の低下と労作時息切れあり精査の結果、右全肺静脈が右心房-下大静脈接合部へ還流する部分肺静脈還流異常症と診断された。僧帽弁/三尖弁閉鎖不全合併あり。心房中隔欠損なし。体外循環/心停止下に経心房中隔アプローチで僧帽弁形成を先行。右肺静脈還流孔は軽度狭窄を認めたため右肺静脈本幹に切り込み開口部を拡大した。右肺静脈開口部と作成した心房中隔欠損孔を人工血管でinterpose(右房内トンネル)し還流路を作成した。術後経過は問題なく、ワーファリン導入のうえ自宅退院した。【結語】成人期に手術介入を行った非典型的な部分肺静脈還流異常症の2例を経験した。症例1は自己組織のみ、症例2は心房内に人工血管を留置する形で修復を行った。還流異常の形態や心内合併症の有無により手術法の工夫が必要であった。