[I-P1-6-09] 右心房への肺静脈異常還流に対する有茎心房フラップを用いた心房内血流転換の中長期成績
Keywords:総肺静脈還流異常症, 部分肺静脈還流異常症, 心房フラップ
【目的】右心房に異常灌流する肺静脈の血流を、心房中隔欠損(ASD)を通して左心房に転換する術式として、通過障害防止と成長を期待した有茎心房フラップが広く用いられる。しかし、患児の成長を考慮した術後中・長期成績の報告は少ない。今回、自験例を検証した。【対象】2008年~現在までに、有茎心房フラップを行った連続5例を対象とした。手術時年齢は2ヶ月~5歳(中央値1歳11ヶ月)で、男児4例。総肺静脈還流異常(TAPVD)llbが3例(1例多脾症)、部分肺静脈還流異常(PAPVD)+ASDは2例。【手術方法】有茎右心房フラップでは、sinus nodeおよびsulcus terminalis (ST)への切開を回避し、STを基部としたフラップを作成し、肺静脈還流口とASDを覆う様に6-0 PDS糸で縫着。TAPVDでは、1例にASD拡大、1例に肺静脈-左房間の隔壁切除・縫合を追加。PAPVD2例では、modified Williams法として使用。3例で右心房切開部への補填はなし。有茎左心房フラップをTAPVD共通幹型1例に施行。肺静脈-左房間の隔壁を切除せず、肺静脈下壁と左心房壁を扇形に開き、血流路拡大のため、ASD後縁を右心房側に持ち上げるように縫着。【結果】術後フォロー期間は、4ヶ月~13年2ヶ月(中央値1年1ヶ月)。多脾症のTAPVD1例で接合部調律を認め、4例は洞調律を維持。心房性頻拍発作もなし。心臓超音波検査では、全例で肺静脈還流口-ASD-僧帽弁、および上下大静脈口-三尖弁に渡り、十分な流路を維持。多脾症の1例で抗不整脈薬内服あり、その他は投薬無く経過し、成長発達は正常。【結語】例数が少ないものの、術後中長期の経過観察結果から、肺静脈異常還流に対する右心房内血流転換に有茎心房フラップの使用は有効、かつ安全であることが示唆された。今後は、成人期での精査とデータベース活用により、更なる検証が必要と考えられた。