[I-P1-7-02] 若年failed Fontan症例の在宅緩和医療への移行を経験して
Keywords:在宅緩和医療, advance care planning, 若年ACHD症例
成人に達する重症先天性心疾患症例が増加するなかで、終末期を迎える若年例も増えていると考えられる。終末期と判断された30歳のfailed Fontan症例が、在宅緩和医療へ移行する過程を経験した。【症例】30歳、女性、多脾症候群、単心室、TCPC再手術後。24歳時にTCPC再手術を受けたが、肝硬変、脾動脈瘤破裂、脳内出血、感染性心内膜炎、急性腎不全、特発性細菌性腹膜炎等を続発した。内科治療に加え腹水の穿刺除水とアルブミン補充等を外来で継続したが、穿刺間隔が短くなり腎不全が悪化、肝不全に至り肝性脳症を発症した。【Advance Care Planning】初回ACPは28歳、急性腎不全の入院加療時で、両親の意向が大きく影響し本人の意志確認が十分できなかった。以降、精神科リエゾンチーム医師が介入し、外来毎に本人と面談を重ねた。また外来看護師への信頼が大きく、できる限り入院加療は避けたいという本人の意向が強く表出された。これを尊重し外来チームの協力のもと約2年間外来加療を継続したが、腎不全が悪化したため両親、本人と再度ACPを行った。在宅医療の希望と侵襲的治療は望まないことが確認され、患者支援センターが介入し在宅医療の体制整備を目指した。しかし知らない医療者が入ることを本人が途中で拒否し、計画は一旦中止された。【在宅緩和医療への移行】その約2週間後に肝性脳症によるせん妄を発症、外来加療で意識が回復した。この時に主治医に加え精神科医、患者支援センター、外来看護師のサポートのもと両親、本人とACPを行い、本人も在宅医療者の介入を受け入れた。同日より在宅診療医師と訪問看護師が、緩和ケアを主軸に診療を開始した。【まとめ】若年ACHD症例において、終末期の判断、ACPの時期や方法、在宅医療の整備など、多くの難しい課題に直面した。簡単に答えは出ないが、各医療チームが役割を明確にして介入することで、本人や家族の大切な決断をサポートできるのではないかと考えられた。